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カルボナーラ
夢を見た。
今日は姉のアカペラのライブの日で、15:00頃出番の予定だったのだが、俺は夢の中で15:16に目が覚めてしまった。
焦った俺は幽体離脱して生霊となって姉のライブに行ったのだ。
ライブ後、なぜか生身の体に戻った俺は、姉と弟と3姉弟で家まで「ダイエットだ!」と言って走って帰り、なぜか東京にあるはずのない実家に行き、家族全員でご飯の支度をした。
仏間から持ってきた高そうな赤い缶のノンアルコールビールを俺が食卓の直前で落として中身をぶちまけてしまい、父が
「あ゛ーっ!!!それ限定品で貰い物で相当高いんだぞ!」
と怒鳴っていたところで目が覚めた。
後半の食事の準備をするシーンはやけにリアルだったな。
時計を見ると13:00少し前。まだ姉のアカペラライブでの出番までは時間がある。アカペラライブは夢ではなく現実のことで、俺と弟はカメラマンをするために招集をかけられたのだ。
電車で1時間くらい揺られ、目的地に着くと、姉の元同僚で友人の女性と弟がいた。どうやら先に着いていたようだ。
カメラマンと言っても姉のスマホで動画を撮るだけの仕事だが、途中MCを挟まず2曲連続で歌ったので、腕が疲れた。
姉の出番が終わると、周りからの評判が思いのほか良かったので驚いた。俺達兄弟は昔から姉の歌を聴いているので、特に感じたことがなかったのだが、どうやら姉の歌はかなり上手い部類に入るらしい。
俺は少し誇らしく思った。
ライブが終わったとき、飲みに行くことになった。姉は同じ社会人アカペラサークルのメンバーと軽く打ち上げをするため、先に弟と元同僚と3人で店に行って飲んでいてくれと言われた。
この元同僚の女性は以前から面識があり、俺も弟も何度か一緒にお酒を飲んだことがあるので、姉抜きで飲んでも特に違和感はなかった。むしろ結構盛り上がっていた。
2軒目でようやく姉が合流。同じ社会人アカペラサークルのメンバーを大勢引き連れてやってきた。何故かメンバーじゃない人も混じっていた気がする。
姉は自分の気に入った人間を自分の家族に会わせるのが何故か好きなので、こういうことはままある。先述した元同僚の女性ともそういう経緯で知り合ったのだ。
家族が自分の交友関係に関与するのがあまり好きではない俺と弟にとっては信じられない話だが、姉は自分の家族と友達が仲良くなるのを見ると嬉しくなるらしい。
まぁ、姉の友だちは良い人ばかりだ。毎年夏、実家に姉と姉の友人が大勢やってきてバーベキューをするのも楽しい。だから今回も引き合わせてくれたことに感謝していた。
しかしながら「私はお姉さんとはあんまり面識ないんですけど…」という人も複数いたのには恐れ入った。連れてくる姉も大概だが、ついてきた人もどうかしているのではなかろうか。
まぁ、俺も人見知りをするほうじゃないので、なんだかんだ言いつつも会話を楽しんでいた。
しばらく楽しく談笑しながらお酒を飲み、お開きの時間になったので電車で帰った。
つまみは食べていたが、炭水化物は摂取していなかったので、小腹が空いていた。
帰りにコンビニエンスストアに寄り、粉チーズとベーコンを買う。部屋にスパゲティと卵があるので、カルボナーラにしようと思った。
ボウルに卵黄を2つ、粉チーズ、黒コショウを入れ、混ぜておく。
ベーコンは1cm角に切り、オリーブオイルでカリカリになるまで焼く。
夜中に寮の共同キッチンで料理をするのは、音が響いてうるさいかなぁと始めは気を使った。
しかし俺以外の夜行性の入寮者が、鈴をつけたカギをチャリチャリいわせながら、夜の廊下を何度も行き来していたので、途中からどうでもよくなった。
しかしこんな時間に何度も何度も廊下を往復して、何をやっていたのだろう。
まぁいいか。ベーコンが焼けたらボウルに移し、焼いたフライパンに水を入れて沸騰させる。
お湯が沸いたら塩をひとつまみ入れてスパゲティを茹でる。
茹で上がったスパゲティのお湯をきったら、ボウルに入れてソースと絡める。
皿に盛り付けて、追いコショウをしたら、カルボナーラの完成だ。
チーズを入れすぎたのか、スパゲティが少しダマになってしまったが、味は及第点だ。
こんなもの深夜に食べたら確実に死期を早めてしまうが、この時間にカロリーの高いものを食べるという背徳感は最高のスパイスだ。
モチャモチャ食べながら、今日の居酒屋での会話を思い出して、部屋で一人思い出し笑いをした。
相変わらず仕事はうまくいかないし、辛いことも多い。しかし大勢でワイワイ楽しく過ごせば、来週もまた頑張ろうという気になれる。
近いうちに姉と弟にはまた会うので、その時が楽しみだ。今度はどんな出会いがあるだろうか。