日本の知見は売られるのか/種苗法改正
チャンネル桜 「種苗法改正と日本の農業の未来」 を視聴しました。
感想として思うことは多々ありましたが、多くは今までの記事(1 種苗法改正反対派の方の意見を読んで 2 種苗法改正/問題の本質 )にて書きましたので、今回は主要作物種子法(以下、種子法)廃止、種子条例について取り上げます。
多くの反対派の方と同じく、この番組においても種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改正の流れで「多国籍アグロバイオ企業」に都道府県などの公的知見が流出してしまうのでは、との懸念を示されていました。農業競争力強化支援法については先の記事で法文は「促進」であり「強制」ではない、と私は論じました。そこをこの記事で補強します。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000919320170323004.htm
上記リンクは別記事でも取り上げた農業競争力強化支援法制定当時の衆議院農業委員会の議事録です、この時に同時に種子法廃止法案も審議されています。
これを読めば種子法廃止の理由の1つが、麦米大豆の作付が少ない都府県にも一律に法律として各施策を要求する事に合理的な理由がない事である、とわかるかと思います。
逆に従来通り施策を実施する自治体が、種子法と言う根拠法が無くなったのだから条例を制定することはむしろ必然です。
そして種子条例を制定できる事こそが、農業競争力強化支援法8条4項に強制性の無い事の証明です。
奇しくも番組の中で山田氏は以下のような趣旨の発言をされています。
「地方自治体は法律に反しない限りどんな条例も作れます」
これは言い換えれば
「法律に違反する条例は作れない」のです
つまり同法8条4項に強制性があり、番組で次官通達を持ち出し述べておられた「公共種子事業を止めさせる」法律ならば、それを論拠に国は、条例を制定した自治体を訴えるでしょう。しかし国はそうしていません。なぜならば条例が法に適っているからです。
以上の事から農業農業競争力強化支援法8条4項は、あくまで都道府県の選択肢を広げただけであり、もしも従来の施策を止めるなら民間にしっかり移行できるよう定めた規定である、と解すべきではないでしょうか
その他の事柄については今までの記事で私が述べた通りです。
それを踏まえた上で改めて述べたいと思います。
反対派の方々の言われるリスクは確かに存在すると思います。しかしその多くは種苗法が改正されようが、されまいが存在するリスクです。これは番組で話されていた食料自給率の問題、食料安保の問題も同様です。
それぞれとても大切なことではありますが、別途議論すべき課題なのではないでしょうか。よって種苗法に規定のない事、種苗法改正云々に関わらず存在するリスクを種苗法改正の論点として加える事は適当では無いと考えます。
番組では「海外流出防止」については賛成とのことでしたので、残る論点は
「自家増殖の許諾性の是非」
これだけです。
この点を私は国会において徹底的に議論、審議していただきたい。ただそれだけを望みます。