種苗法改正
果樹農家ですが接木が下手なこともあり、従来から登録品種は苗木屋さんから買っていたので改正されたからといって困りません。野菜、米は専門外で分からないのですが、果物に限って言えば日本の農家の実力を侮り過ぎです。
水代わりに食べる南国や、砂糖を加えて加工する欧州とは違い、日本では水菓子の名が示す通り、干し柿など例外はありますが生で食べて美味しいことが前提です。
甘い物が溢れる現代において果物もより高糖度が求められるようになりました。また日本では果物には贈答品としての側面もあり見た目も大切とされます。これらが組み合わさり、世界でも例のない高品質な果物が栽培されるようになってきたのでしょう。決して安い海外産に負けるとは思いません。
しかしながら昨今の気象をみると従来の品種が作りにくくなってきています。その為に新しい品種が必要になりますが、今までのように育成者が報われないならそのうち新品種の育成者はいなくなるかも知れません。各都道府県の試験場、独法の農研機構も有力な品種改良の担い手ですが、予算が減らされる中、いつまで研究が続けられるかは疑問です。確かにこの法改正だけで海外流出は防げないかも知れませんが、育成者が少しでも報われたらいいと考えます。
バイエルやシンジェンタといった多国籍企業に従来種が奪われるとの声もありますが、果たして日本は種苗市場として魅力的なんでしょうか。魅力的ならば資金力、開発力のあるそれらの企業は従来から参入しているはずですが、果樹においては聞いたことがありません。これは私が知らないだけなのも知れませんが。
耕地面積が狭く、南北に長く気象が地域によりかなり違う日本は大規模集約化には向かず、種苗市場としては魅力に欠けるような気がします。それより広大な土地のある国に種苗を販売し、現地の政府、生産者と組み日本に市場開放を迫る方があり得そうです。仮に参入してきても良い物で値段が合理的なら苗を買いますし、そうでなければ買わない。選択肢は生産者にあるはずです。
日本の農家を潰して農地を多国籍大企業に渡し大規模農業を実現したいのだ、との意見も見ましたが、日本で大規模化など国際的に見ればたかが知れてます。私なら気候が安定した広大な土地を日本以外で探します。
最後となりましたが、国内農家のことを皆さん考えていていただき、一農家として感謝しています。願わくば何故農家がほとんど反対していないのかをもう少し調べて頂ければ幸いです。