見出し画像

会費額の設定の仕方

 総合型地域スポーツクラブ マネジャーの上杉健太(@kenta_u2)です。私が現在マネジャーを務めている一般社団法人たかぎスポーツクラブは、現在設立8年目。私はクラブ設立2年目からジョインしました。当時は参加費(チケット)で、どの教室も1回の参加費は200円でした。そこから値上げしたり、会費制(休んでも費用が発生する形)にしたり、徐々に変えながら成長してきた経緯があります。それはそれは苦労の連続でした。この問題に取り組むといつも酷い言葉を浴びせられます(笑) というわけで今日は、『会費額の設定の仕方』というテーマでお話したいと思います。会費額をいくらにするかは、クラブの収益を決める大きな問題で、いつもクラブマネジャーの頭を悩ませます。実際に会費額をいくらに設定するかは、クラブの事情によって大きく異なるので、正解があるわけではありません。ただし、そのやり方は大きくは決まっていると思うので、今回は私が経験から学んだことをお伝えできればと思います。

コストで決める

 まず、多くの地域スポーツクラブで採用していると思われるのが、『コストによって会費額を決める』というものです。分かりやすく言うと、「これだけお金かかるので、一人●●●●円集めまーす」ということですね。スポーツクラブに限らず、お友達同士との飲み会やイベントごとなどをやっても、こういうやり方をしますよね。
 具体的に言うと、その計算方法は『会費額=コスト÷会員数』で、例えば1回5000円のコストがかかる活動で、会員数が10人なら、1回あたりの会費額は、5000÷10で、500円ということになります。ただし、これだと利益が出ません。利益が出ないということは、何かあれば赤字に転じるということで、クラブが長期的に運営していくことを前提とするなら健全とはいえないので、そこに利益をいくら乗せるかという話になります。なお、コストには直接的に事業に関わる事業費と、直接的に事業には関わらないが、組織を支えるのに必要な管理費があり、管理費を忘れて会費額を設定すると、クラブ全体としては赤字になるので注意してください。総合型地域スポーツクラブでよくあるのは、その種目の会費が全てその活動に使われているという誤解です。それではクラブ全体を経営することができませんから、当然、管理費というのも会費から回収する必要があります。
 この設定の仕方のいいところは、説明が明確だということです。いくらかかって、会員は何人なので、一人いくらですって、はっきり言えるんですね。問題になるのはコストの妥当性くらい。なので、たかぎスポーツクラブのように、会員主体のクラブはこのやり方を採用する場合が多いのではないでしょうか。
 ただし問題点もあります。それは、コストや会員数が変わる度に会費額の見直しをしなければならないという煩雑さです。例えば指導者が変わって、次の指導者との謝金交渉でコストが上がったり、または会員が極端に減ったりすれば、会費を上げなければならなくなります。逆の場合は会費を下げなければなりません。それこそ、コストに応じた会費額の設定を忠実に実行していくと、本当に毎年毎年見直しをするなんてことになりかねません。
 さらに、会費額を揃えにくいという問題点もあります。例えば同じコンセプトのテニスのクラスがあって、月曜日と水曜日でコーチが違うとします。クラブとコーチの謝金交渉の結果、月曜日のコーチの方が水曜日のコーチよりも謝金が1.5倍高いとすると、会費額も1.5倍しなければならなくなります。曜日が違うだけで同じ活動なのに、会費額が違う。こういうのがいくつもあると、クラスの会費額がてんでバラバラということになってきてしまい、事務処理が非常に煩雑になります。実はこれがたかぎスポーツクラブの現状で、ここに2種類の割引制度まであるので、もう色々な会費額が出てきてしまって、トラブルの元にもなってしまっています。人は分かりやすさを求める生き物でもありますので、会費額が一見バラバラだと、入会を検討するうえでの一種のハードルになってしまっているかもしれません。

市場価値で決める

 もう一つが、『市場での価値』で決めるという方法です。要するに、需要と供給のバランスとか、同業他社やその他のサービスの価格などとの比較とかで決めるということですね。
 例えば、新しく活動を作ろうとした時に、まずは現状のクラスの会費額や周辺のスポーツクラブや教室の価格を参考に、月3300円で始めたとします。それがあっという間に満員になり、キャンセル待ちまで出続けているような状態になれば、その活動は月3300円以上の価値があると認められます。そうなった時に、活動を増やす資源(指導者や場所)がなく、でもクラブの収益を上げたいという風になった場合には、この需要が供給を上回っているような”満員の活動”の会費額を上げるということになるのだと思います。
 たかぎスポーツクラブの場合はこのやり方をやったことは一度もありませんが、現実的には会費額を上げるなら人気のあるところをやるというのは、理には適っている側面があることは否定できないでしょう。ただし、それが長期的に見ていい判断かどうかは、私には分かりません。心情的にはあまり好きなやり方ではありませんね。私は。特に、会員主体のクラブにはあまり歓迎されないやり方でしょう。
 クラブと言うのは、仲間と一緒にやるというのが本質で、仲間を誘うことができる、仲間を誘いたくなるというのが非常に大切です。例えばたくさんの仲間を呼んでクラブを盛り上げた結果、「この活動は人気があるので値上げします」なんてされたら、仲間を増やす必然が弱まってしまいますよね。クラブの盛り上がりにも影響しかねません。なので、会員主体のクラブには合わないやり方かなと思います。

ここから先は

1,413字
総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5