回復アイテムとしてのスポーツ

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表やスポーツ推進審議会委員をしたり、長野県のクラブのアドバイザーをしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。総合型地域スポーツクラブのキャリア10年目に突入しました!

 今日は、『回復アイテムとしてのスポーツ』というテーマでお話します。


 たまに、「生涯スポーツって何だろう?」とか、「生涯スポーツの良さって何だろう?」と思うことがあります。何事も、それについてやり過ぎたり、考えすぎると、よく分からなくなるものです。何回も何回も同じ文字を書き続けると、何だかちゃんと書けている気がしなくなる、間違った字を書いている気がしてくる、あの感じと似ているかもしれません。こういう時は一度別の文字を書いて見ると解消されたりしますよね。

 「生涯スポーツって何だろう?」も同じで、逆の立場を取っているスポーツについて考えてみるとスッキリするかもしれません。では、生涯スポーツと逆の立場を取っているスポーツとは何でしょう?生涯にわたって続けるスポーツとは逆ということは、人生の極めて一部分だけやるスポーツということになります。私の頭に思い浮かぶのは、『教育としてのスポーツ』です。

 多くの家庭で、子どもにスポーツをやらせていると思いますが、中には子どもの意志よりも保護者の希望の方が強い家庭もあると思うんですね。それは何も、子どもに嫌々やらせているというよりは、保護者も子どもも、「将来の為に」と思ってやっていることが多いように思います。これこそが、『教育としてスポーツ』です。自らや自分の子どもが成長し、何らかのスキルや価値観を獲得する為にスポーツをする。目的はスポーツを楽しむことではなく、スポーツを通じて得たスキルや体力、マインド、社会的評価を利用して、いい学校へ進学したり、いい会社に入ったり、より多くの収入を得たりすること。目的が達成できた場合、あるいは達成できないと判断した場合、もうこの人たちはスポーツをする理由がなくなるので、多くの人がスポーツをやらなくなります。これが『教育としてのスポーツ』です。

 『教育としてのスポーツ』の領域では、多く人がスポーツに”夢”や”希望”を抱いています。プロスポーツ選手になる!特待生になる!体育会系のコネで大企業に入る!スポーツで青春をする!その夢や希望の規模は様々だと思いますが、いずれも自分の人生をさらに輝かせようとするものです。

 ところで皆さんは、テレビゲームのRPGゲームなどをやったことがありますでしょうか?RPGゲームでは魔法を使えるキャラクターなどが登場することが多いのですが、魔法というのは大きく分けると『攻撃魔法』と『回復魔法』の2つです。相手を倒し、道を切り開いていく攻撃魔法。自分や見方を回復し、戦いや旅を続けられるようにする回復魔法。
 先ほどの『教育としてのスポーツ』をこの魔法に置き換えて考えてみると、攻撃魔法だなと僕は思うんですね。スポーツを使ってまさに人生を切り開いていく。『教育としてのスポーツ』の多くが競技スポーツなので、実際に相手を倒していく感じとも一致します。『教育としてのスポーツ』はまさに攻撃魔法です。


 さて、ではこの『教育としてのスポーツ』の逆の立場にある『生涯スポーツ』は何だと考えると、当然これは、「回復魔法である」ということになりますよね。回復魔法は自分や見方を回復し、戦いや旅を続けられるようにする魔法。人生に置き換えると、80年ほど続くかもしれない長い時間を生き抜く為に、自分の体力やメンタルを回復する。それにスポーツを使う。回復魔法としてのスポーツは、そういう役割を担うことになります。

 僕が地域スポーツクラブに期待するのは、まさにこの回復魔法としての役割です。会社員をやっていた7年間ほどの間に、僕は本当にバリバリ働き、バタバタ倒れている人たちを見てきました。
「この人はこんなクリエイティブなものを作れて凄いな」
「この人はこんなに長い時間働けて凄いな」
と尊敬していた人たちが、次の日には姿を見せなくなり、休職してしまうようなシーンを本当にたくさん見ました。実際に僕もメンタルをやられそうになる時期を経験しました。それは何も、その会社だけで辛いことがあったわけではなく、もしかしたら家庭でトラブルを抱えていたかもしれないし、友人関係で何かあったかもしれません。人生には色々な辛いことがあります。

 そんな様子を見ていた僕が思ったことは、「僕たちにはもっと回復アイテムが必要だ」ということです。僕たちの体を健康にしてくれて、僕たちのメンタルを穏やかにさせてくれて、一緒にいると安心する存在が、僕たちには必要なんだ。そう思ったんですね。そして僕にとってはそれが、大学生の時に立ち上げてずっと続けていたフットサルクラブでした。たった週に1回の活動でしたが、僕はそこで仲間たちとボールを蹴るのを楽しみに、ちょっと辛い日々を乗り越えていた気がします。僕にとってあのフットサルクラブは、攻撃魔法ではなく、回復魔法・回復アイテムだったんです。そこで回復し、ちょっと辛い日常に戻って行っていた気がします。生涯スポーツの在り方は、これだと思っています。

 人生はとにかく長い。僕はこの記事を書いている現在40歳なのですが、正直「まだ半分しか生きてないのかよ!」と絶望しそうになることがあります(笑) この長すぎる人生を生き抜くのは、道を切り開く攻撃魔法も必要ですが、同時に回復魔法・回復アイテムも絶対に必要です。これを絶対に忘れてはいけません。この回復を疎かにした人から、倒れていっている気がしてならないんです。そしてこの回復という考え方を、たぶん僕たちはほとんど教わらないで大人になっています。教育現場では、とにかく「頑張れ!」「努力しろ!」と言われて、本当に昔は休むことを悪とする風習さえありました。今ではその考え方はだいぶ変わり、回復を重視する方向性になってきているとは思いますが、スポーツについてはまだまだ”攻撃”に寄っているように思えるんですね。日本では特に、義務教育課程に体育がある分、どうしてもスポーツのイメージが教育に偏りますからね。だからこそ僕たち総合型地域スポーツクラブは、子ども達にももっと回復の重要性を伝えていく必要があると思うんですね。人生は長い。その人生を走りぬく為には、回復が大事だ。回復しなければ絶対にいつか倒れる。優秀な回復魔法を使えるパートナーを見つけろ。それが自分に合ったスポーツだ。いつでも使える回復アイテムを持て。それが自分に合ったスポーツだ。そういうメッセ―ジを事業を通じて発信していく。生涯スポーツ社会の実現を目指した総合型地域スポーツクラブの一つの在り方なのだろうと思います。


 人生における回復魔法や回復アイテムは、何もスポーツに限りません。でも、回復において重要な観点である「健康」「生きがい」「仲間」を得るに、スポーツは非常に優秀なツールだと僕は信じています。だから僕はスポーツを広めるし、その為に総合型地域スポーツクラブを普及・発展させます。

 読者の皆さまには、ぜひご自身の人生の回復魔法・回復アイテムは何か。一度考えてみていただき、それを広めていただけたらもっと日本人が幸せに長い人生を生きていけるのかなと思います。それぞれの道で頑張りましょう!


 というわけで今日は、『回復アイテムとしてのスポーツ』というテーマでお話しました。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5