総合型地域スポーツクラブは大きい方がいい
どうも、上杉健太(@kenta_u2)です。”誰もが、いつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる”総合型地域スポーツクラブを広める活動をしています。これまで7年間長野県のクラブをマネジメントしてきて、現在は埼玉県富士見市で立ち上げにチャレンジしています。
今日は、『総合型地域スポーツクラブは大きい方がいい』というテーマでお話したいと思います。
まず、そもそも総合型地域スポーツクラブは、多世代・多種目・多志向という特長を持とうとするクラブなので、規模は大きくなる傾向にあると思います。例えばバレーボールだけのクラブよりもバレーボールとテニスをやっているクラブの方が、会員数や活動数が大きくなる可能性は高いし、小学生だけが集まってやっているクラブよりも、小学生と高齢者が集まってやっているクラブの方が大きくなる可能性は高いです。
(※もちろん一概には言えない)
実際に、総合型地域スポーツクラブの会員数の規模を見てみると、101人以上のクラブが約75%もあり、その内301人以上のクラブが約35%もあります。
ちなみに、種目数で見る規模としては、3種目以上やっているクラブが実に92%もあります。
この数字も見る人によっては「まだまだ小規模だ」と捉えるかもしれませんが、あくまで日本の歴史上の地域スポーツジャンルの中での話なので、私は十分に総合型地域スポーツクラブの規模は大きくなる傾向があると言っていいと思っています。
(※助成金などの行政支援がリッチというのも大規模になる大きな理由)
ただ重要なのは、”大規模になること”ではなくて、”大規模を活かすこと”だと思っています。
大規模のメリット①:ミスマッチを避けやすい
メリットの1つ目は、ミスマッチを避けやすいということを挙げたいです。総合型地域スポーツクラブのやるべきことの一つに、『その人に合ったスポーツを提案する』だと思っているので、種目や志向、対象の世代などは多い方がいいんです。多くの選択肢がある方が、その人に合ったスポーツに出会える確率を高められるに決まっていますから。
クラブはどうしても、用意できている活動しか提示できないので、それが少ないとどうしても多少のミスマッチには目をつむって、クラブの型に人をはめこまなければならないんです。これは総合型クラブにおいても同じではあるのですが、選択肢が多ければミスマッチは起こりにくいということです。「じゃあこちらの種目はどうですか?」という提案が何度もできたらいいですよね。
で、これは何も、入会のタイミングだけの話ではないんです。総合型地域スポーツクラブが目指すのは生涯スポーツですから、目の前の会員が、それこそ亡くなるまでずっとクラブの所属し続けるようなクラブになろうとします。すると当然やらなければならないのは、一人の人のニーズの変化への対応です。怪我や病気、家庭環境、仕事の都合、クラブ内の人間関係、色々なことが要因となってスポーツのミスマッチはずっと起こり続けるんです。
例えばテニスをやっていた人が膝を悪くしたとします。その時に、他に提示できる種目がサッカーとバスケットボールだけだったら、「それはもうできないから退会します」となりますよね。クラブを退会するだけで済めばまだいいのですが、「もうスポーツはできない」と思い込んでしまってスポーツを引退してしまう可能性だって出てきてしまうんです。
でもそこに、「ヨガなら膝に負担をかけずにできますよ。卓球も、やり方によってはテニスよりは動かずにできるかもしれませんね」と提示できれば、クラブでの活動を続ける可能性はぐっと高まります。
人生スパンでその人に合ったスポーツを提示し続ける為には、多くの選択肢がなければならないんです。総合型地域スポーツクラブが目指すのはそういうクラブだと思っています。規模の大きさを活かして、人とスポーツのマッチング精度を高め続けるんです。
大規模のメリット②:経営効率がいい
2つ目のメリットが経営効率がいいことです。これはとても分かりやすい話で、人間が家族と一つ屋根の下で暮らす理由と同じです。バラバラに暮らすと、それぞれに生活コストがかかってしまいますが、一緒に暮らすことで一定のコストを共通にすることができ、コストを削減できますよね。
家族が一つ屋根の下で共通にできるコストといえば、家賃や光熱費の基本使用料、家具や家電などを用意するのに必要なお金あたりかなと思います。
クラブの場合、例えば野球クラブとサッカークラブがそれぞれ活動すると、事務局運営費や用具費、会場費、コーチ報酬などのコストがそれぞれにかかります。それが1つのクラブとして活動ができると、まずは事務局は一本化できる可能性が高いので大きくコスト削減することができます。一つ屋根の下で暮らせば家賃は1つでOKということです。
(※多くのクラブは事務局をボランティアでやっているので、コストとして意識していない可能性が高いですが、ボランティアスタッフの心理的・身体的負担と言うのは明確にコストです)
さらに、用具費も削減できる可能性が高いです。例えば野球は土曜日でサッカーが日曜日に活動するなら、土曜日に野球が使った用具を日曜日にサッカーでも使える可能性が出てきますからね。例えばネットとかコーンとか、そういうどのスポーツでも使えるようなものは、共通化できる可能性があります。
ただし、会場費やコーチ報酬、消耗品などは変動費と呼ばれる類のコストで、やればやるだけかかるもの。総合型クラブ化では効率化はできません。固定費に関しては、クラブの規模が大きくなればなるほどメリットも大きくなります。
もちろん事務局や用具などのヒト・モノ経営資源を共通化することは、それぞれの活動を繋ぐことにもなり、先ほど申し上げたニーズの変化への対応を迅速化させることにもなります。
大規模のメリット③:リスクヘッジ
最後にもう1つメリットを挙げるなら、リスクヘッジです。リスクヘッジとは、リスクの分散のことです。リスクを散らしておくことで、クラブ全体が潰れる可能性を下げようということです。
ここでいうリスクとは、例えば会員数が減少するというリスクです。会員数が減少すると会費収入や参加費収入が減り、そうなると経営は危機にさらされます。空手だけをやっている場合、空手会員の減少はただちにクラブ継続のピンチとなります。しかし、空手とダンスをやっているクラブなら、空手会員が減少しても、ダンスの会員数が好調なら、ダンスが空手を支えることができます。そして次の年には、空手がダンスを助けるかもしれません。
このように、総合型地域スポーツクラブでは、それぞれの活動が助け合うような関係性を構築することができるのです。それぞれの活動で会員が多少上下しても、他でカバーできる。1つの活動の依存度が低いという意味で、これはリスクヘッジになっているということですね。
そしてこれは、規模が大きくなるほど、大きくなるメリットだと思います。大企業が安定していると言われる所以でもありますよね。
というわけで今回は、『総合型地域スポーツクラブは大きい方がいい』というテーマでお話しました。もちろん総合型地域スポーツクラブでもリソースは限られているので、大きくすればするだけいいというわけではもちろんありません。限界を超えるような規模は、自滅を招くとは思います。なのであくまでも基本的な考え方という程度でとどめておいてください。
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総合型地域スポーツクラブ研究所
総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…
総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5