不甲斐なさが無くなった未来を夢見て
高校野球。
秋の大会、ベンチを外れた。
小中同じチームの後輩がベンチに入った。正直負けてる気はしてなかった。
発表後、監督さんに呼ばれた。
「ベンチに入れなくてすまんな」
はぁ?ふざけんな。
そんな言葉求めてない。
自分が惨めになるだけだ。
でも、全部自分の実力が無いから悪いんだ。
悪いのは全部自分だと知っていた。
ムカついたから練習した。
冬トレも頑張った。
それでも春の大会もベンチを外れた。
スタンドで応援している自分。
その後ろで試合を観ている両親。
沢山お金を掛けてもらってこれかと思うと自分が不甲斐なかった。
夏こそは。そう思って必死にやった。
そんな中また監督さんに呼ばれた。
「サイドスローでピッチャーしないか」
はぁ?ふざけんな。
秋と春の悔しさを夏にぶつける為に、プライドを持って守ってきたポジションを変えろと?
それまでどれだけ悔しい思いをして苦しんで来たのかまるで分かってくれていない。
それでも、やっぱり悪いのは実力が無い自分だ。
自分がチームを引っ張る実力があればこんな事にはなっていなんだ。
監督さんはどうにか使ってやりたい思ったのだろうが、はっきりと断った。
そこで首を縦に振ってしまうと今までの自分を否定する事になる。
自分を裏切りたくなかった。裏切りたくないくらいにやったから。
夏の大会。
それまで守っていたセカンドでメンバーに入る事が出来た。自分を信じて良かった。やっと背番号が貰えた。1年生の秋ぶりに母に背番号をユニフォームに縫って貰えた。
「13」
背中に縫われた背番号。
本当は1桁が良かった。
夏の大会前の栄養会。
会の終盤で3年生それぞれが両親と写真を撮ることになった。
うちの両親は6つ離れた兄が小学校4年生の時から14年間、野球をしている息子の姿を見てきた。
それが今年で最後になる。
そう思うと寂しくなったのだろう。
写真撮影が終わった時、母の目からは涙が流れていた。
その涙を見た時、それまで野球をしてきてチームの中心で活躍する姿を見せることが出来なかった自分の情けなさと悔しさが込み上げてきた。
最後の夏の大会1回戦。
出番はなく、チームも負けた。
1年生大会準優勝
秋の大会ベスト4
春の大会ベスト16
前の大会までの実績を超えることは出来なかった。
結局、野球を通して活躍する姿を見せることも出来ず、両親には何も返すことは出来なかった。
本当に不甲斐ない息子だ。
そんな不甲斐ない自分の事を考えるとお風呂に入っていても、部屋に居ても申し訳なさで泣けてくる。
もう、これからの人生で今までの分を返していくしない。そう思うしかない。
受験は失敗し、浪人させてもらって大学に入った。高校を卒業してもお世話になってばかりで何も返せていない。こんな自分が嫌だ。だからチャレンジしてみた。でも足りない。もっとデカくなって要らないと言われる程に恩返しがしたい。母さん、父さん、待っててください。2人が誇れる息子になるまで。