コラム:特撮モノを考える~2023年総括編②”キングオージャー/ウルトラマンブレーザー”
将来特撮モノを語るとき、2023年は奇跡的な年だったと言われるような名作が数多く生まれた年であった。
ここでは特撮モノの定番TV番組としてのニチアサの戦隊モノとウルトラマンにフォーカスを当てたい。
ニチアサは仮面ライダーと戦隊ヒーローの2大コンテンツで成り立っているが、今まで戦隊モノがより低年齢層向けであり仮面ライダーは戦隊を卒業した層にターゲットを当てていた。
それぞれに魅力的なコンテンツであり、より設定が複雑化してきた仮面ライダーに対し、単純明快な戦隊の魅力が相対的に上がってきているように感じる。
特に2年前のゼンカイジャーからその傾向は顕著になり、ゼンカイ脳と言われた何でもありの弾けた路線のゼンカイジャーは当時としてはかなり挑戦的な作りをしていたと思うが、それに続いたドンブラザーズは更にぶっ飛んだものとなり今まで戦隊モノを子供のものとして半ばバカにしていた層までも取り込むことに成功した。
ドンブラザーズの在り方はそれまでの戦隊モノの定番から大きく外れ、かの井上御大による脚本は今更井上脚本も無いだろうという下馬評を吹き飛ばしスマッシュヒットどころか大ホームランをかっ飛ばし、戦隊モノに一石を投じ、後世に名を残すこと間違いなしの名作として君臨した。
そのドンブラザーズの後を次ぐキングオージャーはドンブラザーズを超えることなど絶対無理と思っていた。
しかし、その予想は間違っていた。
キングオージャーは今までの戦隊にない純粋なファンタジー路線に舵を切り屋外でのロケよりも背景にCGを多用し、戦隊モノの基本であった巨大ロボ戦を必須とはしない設定など、設定面、映像面でもこれまでとの違いが明確になっている作品だ。
しかし、それ以上にストーリー構成が毎回が神回と言えるほどの素晴らしい出来で、何回最終回をやるんだとSNSでつぶやかれる程高品質で感動的な話を何回も盛り込んできている。しかも驚くべきことにそこまでしても全体の構成に破綻の兆しすら無いという恐るべき話を繰り広げ続けている。
純粋なファンタジー路線と思われていた設定も話が進むに連れ、我々の地球との関連が語られ単なるファンタジーだけではない物語の深さを見せつけてきている。
しかもそのストーリー上のキーとなるその地球との繋がりの話は、10周年を迎えたキョウリュウジャーとのコラボ回で展開されている。
今までであればコラボ回はそれだけでお祭り的な回になるので単純なファンサービス回として終わるようなところだが、そのコラボ回も物語の本筋に絡んできており、しかもその絡み方も異種族間での共存という点で敵であるキャンデリラと結ばれるキョウリュウブルーのノッさんと、バグナラクと人間の間のジェラミーの立場と対比させるなど見事としか言いようがない。
主人公サイドのラクレスの立ち位置は敵か味方か物語当初から考察できそうな謎をチラチラと見せながらも2023年最後の放送ではやはり味方であり、しかも今まで壮大な計画のために自ら汚名を被り計画を進めていたという流れや、それに呼応し主人公であるギラの変身の「ラクレス・ハスティーの弟」と明言する口上が涙を誘う。
このレベルの話が毎回続いている。
1話たりともハズレ回がなく無駄がない。
本当に何という恐るべき作品なんだろう。
戦隊モノとしてカッコいい戦隊やストーリーが面白い戦隊は今までもいくつかあった。しかし、キングオージャーはそれらの作品とは一線を画している。
もう戦隊モノの枠に入れておくべきではない程の名作だ。
後世に語り継がれることは間違いない。
さて日本を代表するもう一つの特撮といえばウルトラマンであるが、2022年からのウルトラマントリガー、その後のウルトラマンデッカーは、名作と言われたウルトラマンティガとその続編のダイナと間接的に繋がったリメイクとも言える作品だった。
デッカーの後のウルトラマンはダイナの後番組だったウルトラマンガイアのリブート作品かと思われていたが、今年2023年に始まったウルトラマンブレーザーは全く独立した新ウルトラマンだった。
そのブレーザーであるが異色の存在だ。
変身者は防衛組織の隊員ではなく隊長でありしかも妻子持ちである。
ウルトラマンもここ数年は日本語を喋るウルトラマンも多かったが、ブレーザーは日本語はおろか「シュワッチ」等のウルトラマンあるあるな掛け声も話さず獣の雄叫びのような声を発するのだ。
防衛組織であるSKaRDの基地は予算の少なさを感じさせる倉庫の片隅のような場所に存在している。番組としての予算も少ないのかもしれないが非常にリアリティを感じさせる。
物語はSKaRD設立時点から開始され、1話完結の物語かと思われたが回を重ねるに連れ主軸となる話は非常に謎を秘めたV99という事件ということが徐々にわかてっきた。
その謎を突き止めていくのは最年少である23歳の天才女性隊員アオベエミであり、彼女の父親の研究での事故がウルトラマンブレーザーの存在そのものにも関連しているような状況だ。
物語全体はかなり本格的なSF寄りであるが、怪獣型メカであるアースガロンはメカゴジラを可愛くしたような見た目であるが、発進シーケンスはエヴァンゲリオンやウルトラ警備隊を思わせ思わずニヤリとしてしまう。
物語の中には単発の過去のウルトラシリーズの怪獣が出てくる話もあるが、単に過去作の怪獣を出すだけではなく物語の本質との関連も強いものとなっているのは特質すべきことだろう。
奇しくもキングオージャーが過去の戦隊モノであるキョウリュウジャーとのコラボ回が単なるお祭り回ではなかったのと呼応するかのようにウルトラマンブレーザーでも過去の、しかもウルトラシリーズの原点であるウルトラQに登場したガラモンとそれを操るセミ人間登場の回は単純な話では終わらなかった。(第9話「オトノホシ」)
音楽家の東儀秀樹の手によるウルトラQのテーマ曲を彼自身が演じたセミ人間に演奏させ、テーマ曲とストーリーが非常に高度に絡み合い感動を与えた名作となった。
そのうえエンディングまで特別編集されているこの回は数多あるウルトラシリーズの中でもベスト5に入るであろう名作だ。
ちなみにこの回も含めた個人的なベスト5は以下の通り。
しかもこの回は単にそれだけでは終わらず、ガラモンが地球に突入したコースがそれまでに到来した他の宇宙怪獣の突入コースと異なっていることにより、本筋の謎であるV99に迫るきっかけになっている。
よくある懐かし怪獣回で終わっていないのも素晴らしいとしか言いようがない。
キングオージャーとウルトラマンブレーザー。
後世に語り継ぐべき番組が同時期に存在し、またゴジラ-1.0も公開されたこの2023年という年は特撮モノにとって奇跡のような年だったと言えるだろう。
惜しむらくは仮面ライダーがその立場に入れなかった点だ。
8月までの仮面ライダーギーツは面白い作品だったが、そこまで特筆するほどではない。
残念なのはそのあとの仮面ライダーガッチャードだ。
キングオージャーと比べるのも酷だが、仮面ライダーと戦隊の視聴者層を逆転させているかのような内容はいかがなものか。
敵である冥黒の三姉妹の存在は面白い存在だが、どうしても牙狼の三神官(ケイル・ベル・ローズ)を思い出してしまう。牙狼の三神官の設定は非常に良くできていたためそれを超えることはほぼ不可能で、仮に同じようなことをしても二番煎じとしかならず非常に難しい。
2024年はどういった年になっていくのか。
ひとまずは1月12日からのゴジラ-1.0/Cを観るとしよう。
2024.1.1
紅白のおじさんホイホイコーナー(キャンディーズ、ポケビ、ブラビ、薬師丸ひろ子、寺尾聰)を聞きつつ更新していたら年を越えた
今年もよろしくお願いします