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けんちゃんの気まぐれRecommend 【No.5 FIBER&FACES 12+1】

“私の10年に及ぶ多摩美生活がひと段落します”
大学の同級生のフェイスブックの投稿にこうあった。おぉ、そうかそうだよね。鉛筆を削っていたあの頃とは違うよね。夜は眠いし、涙腺も緩くなるさ。税金も納めるようになったし、子供がいる人もいる。それぞれの人生は確実に10年分進んだのだ。ひとつ、大学でお世話になった弥永保子教授が、この3月で退官される。記念として先生と作家活動をしている教え子12人による、テキスタイルファイバーアートの展覧会が、アーツ千代田3331にて開催されている。弥永先生ファン筆頭のけんちゃんは、もちろん初日のレセプションへ出かけてきた。

http://www2.tamabi.ac.jp/cgi-bin/tx/news/?p=4552

自分と先生の出会いは、地元の予備校であった。とにかく、多摩美! TOKYO! に行きたかった自分は、トゲトゲにとんがっていた、と思う。大学の宣伝も兼ねて、予備校などを回るツアーで同行していた先生が、自分の予備校に来てくれたのだ。予め課題をこなして、簡単な講評をしてくれるという流れになっていた。ドキドキ、その時を待っていたら、多摩美の御一行(ダクトやグラフィックの先生もいたかな)の中で、一際ハデな女性が! それが自分と弥永先生のはじめましてだった(なんだこれ、恋みたいw)。簡単な講評、ってことだったのに、めっちゃ長い! 熱心に細かくコメントしてもらったのを覚えている。
“花は綺麗にかけているわね、香りがしてきそう”“色彩は、もっといろんなものを見て好きな色を学んで!”
いただいたフレッシュな言葉たちは、乾ききった浪人時代の僕の心には、砂漠のオアシスのように染み渡った。半年後晴れて合格し、4年生には担当クラスの学生としてのご縁をいただいた。在学中には、大変にたいへんにお世話になり書ききれないのだが、印象的なエピソードをひとつ。
卒業制作で、展示する什器を工芸科の設備をお借りすることになり、教授の承認が必要ということになり先生にお願いした。いつもギリギリな自分は、忙しい先生に無理を言って、それでも快諾していただいた。
“私はその時間、図書館にいるから迎えに来てっ!”
迎えに行った。季節は、卒制提出前の12月。多摩美は寒い。図書館につくと、公開講評で談笑する先生。
“あの、先生そろそろ...”
“わかったわっ!”
図書館を飛び出す先生。追いかける自分。爆走する弥永先生。追いかける自分。どうか想像してほしい。キャンパスの高低差日本一を誇る多摩美の一番下に位置する図書館から、最上部に近い工芸棟まで駆け上がるということを。工芸研究室に到着し、自分に変わってお願いをしてくださった。本当に頭が上がらない。
さて、話を戻しまして...。アーツ千代田3331は、言わずと知れた廃校をリノベーションし、アート&デザインを主軸とし、ギャラリー機能・ショップ機能を付随させた複合施設で、国際的にも注目されている。そんなメインギャラリーで、弥永先生をはじめファイバーアーティスト達の作品群が、空間を贅沢に使って展示されていた。
弥永先生の作品。本当に美しい。
作者の目を通して見ているかのように、何に感動して、どんなものを美しいと思ったかが、すーっと自分の中に入ってくる。南の島での出会いをモチーフに長年制作をされていた作者が、海や植物の色彩、強い光を浴びた風土、それに心動いたことが、作品を通してダイレクトにくるのだ。色眼鏡なしに、美しい。
本展覧会のタイトル“Metamorphosis”とは、サナギが蝶になるなどの“変態する”という意味をもつ。合わせたかどうかは、さておき参加作家の作品には、蝶がモチーフのものがいくつか見られた。先生がレセプションパーティーでのスピーチで語っていたように、“サナギだったみなさんが蝶になって飛び立って行ってほしい”。そんな想いへの、アンサーのようにも感じた。
さて、自分は蝶になれているだろうか。まだサナギなのでしょうか。答えはわっかんない、けど頑張る。
会期は2/24日まで。見応えのある展覧会となってますよ。ぜひ、お出かけください。あ、そうそうこの投稿の写真は、展覧会の冊子と、先生に指導いただいた自分の卒業制作です。なかなかキレイじゃん。
では、では、またね。


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けんちゃんの気まぐれRecommendとは?
けんちゃんの独断と偏見で選んだもの・こと・ばしょを、不定期で精力的におすすめするコラム。あーん、書いてて泣けてきたw 弥永先生、本当にほんとうにお疲れ様でした。

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