狂言のことばは知らずとも分かるモノが多ござる『二人袴』の三
和ろうてござるか〜
弁慶の人形やエノコロ(イヌ)
饅頭を買う約束を取り付けた上にも
奥さんの実家へ兄に付いて来てくれと云う聟
一人で行けと云いつも、ごねる弟に押し切られ
仕方なしにも付いて行くことにした兄は
まあまあ弟に甘いお兄ちゃんでござる
大事な袴を弟の腰に結わえて道行でござる
ここで弟を先導しながら兄
「聟入り、と申すものはツ〜ッと晴れいなモノで
垣からも、窓からも、ただ目ばかりじゃによって随分、臆せぬようにさしめ」
すなわち
聟入りと云うものは晴れがましいモノだから
道行きの途上、生け垣や窓から観にくる人が多いので、臆することのないように
と云うのでござる
ここでいつもわたくしは
垣からはともかく、窓🪟からと云うのに
引っかかってござったが
室町時代には明かり採りの窓があったようで
障子張の窓が普及していたのでござろう
そうこう申すうちに舅の家門前に到着してござる
二人は橋掛かりから本舞台を向き、見上げるように
聟「これが舅殿のイナシでござるか」
兄「なかなか」
聟「まずは大きなイナシでござるの」
兄「舅殿は勝手者じゃによって、イナシも大きい」
説明は無くとも意味は分かるかと思いまするが
‘イナシ’とは家屋敷のこと
‘勝手者’とは金持ち、財産家のことでござる
このように狂言は室町時代からの伝統芸能でござるによって
聴き慣れぬ言葉もござるが
前後のことば、流れを追ってまいれば
おおよそ推しはかれると存ずるところ
さて聟に袴を履いておけと言い付けて
兄は舅宅へ案内を乞うて来るのでござる
‘案内を乞う’は狂言には、たびたびある事でござる
モノ申、案内申と声掛け
太郎冠者が応対
最上吉日じゃによって聟が来た、と仰れと伝えまする
これより舞台は四人の掛け合いが始まりまするが