狂言因幡堂三 妻は耳元で囁く
和ろうてござるか~
中学生のころ
眠っている間に枕に仕込んだ学習テープを聴いて
暗記ができるという睡眠学習の広告を読んで
やってみたい気持ちと、そんな都合の良いものがあろうか?と
疑う気持ちがせめぎ合ってござった
この学習テープの有効性は判りませぬが
目覚める間際の夢には周りの音の影響が出ることがあるそうでござる
親里へ行った折に離縁状を送られた女は
新しい妻を求め因幡堂にて祈願の通夜をする男の元へ
一計を案じた女は男の耳元に近づくと
と囁いてござる
女は因幡堂の観世音菩薩のお告げのフリにて
男にメッセージを伝えた後は
すみやかに立ち去ってござる
男は目を覚ますと
新たなご霊夢を賜ったと大喜びでござる
「すなわち、西門の一のきざはしに立たせおくを汝の妻と定めよ、との
新たなご霊夢でござる」
女の策略とも知らず、
さっそく西門へ急ぐ男は常のごとく👉目付け👉脇👉常座と
短い距離も‘道行’で移動でござる
この男の道行の間に揚幕の隙間から小袖を頭から被った女が
橋掛かりを通って本舞台の少し手前、一の松辺りに
男は西門に着き
一のきざはしに立つと云う女性を探しますると
橋掛かりに、小袖を頭から被って立つ女性を見つけてござる
声を掛けるのが恥ずかしいと
行きつ戻りつする男ではござるが
と思い切って声掛けいたしまする
小袖を被ったまま、大きく頷く女
観世音菩薩に授けられた妻だと確信した男は
さっそく家に迎えようとするのでござる