狂言『因幡堂』女と盃を交わせるや男
和ろうてござるか〜
酒好きで家事をせぬ女に
実家に帰った隙に離縁状を送り
因幡堂にて観世音菩薩に妻乞いの通夜
聞き付けて怒る女が耳元で菩薩の代わりにお告げ
顔を隠してお告げの妻として現れ自宅へやって来てござる
男の家へ入り、対面してもなお小袖を被ったままの女でござる
不審に思うても然るべきところではござれども
せっかく観世音菩薩から授けられたお妻様ということでござろうか
そのままめでとう杯を交わしましょうとなってござる
表題にある写真の如く、右腕差し出し大盃を取ると
これへ注げと促す仕草
小袖を被ったままでかように横柄な態度はどうかと思いまするが
ここで男は
「婚礼の盃は、まず女から呑みそれを男へ差すものじゃと申しまする」
と受け入れてござる
型の通りに盃に酒を注ぐと
ひといきに呑み干す女
男は盃を受け取ろうとするも
女は離さず、今ひとつ注げと催促の仕草に
仕方なく続けて酒を注ぐ男
大盃に二杯目の酒もひといきに呑み干す女
女がさらに酒🍶を催促すると
足りなくなってござれば、新たな酒を用意しに行く男
この辺りまで来ると
自分の妻はどうしても酒好きなようだと独言ちてござる
而して三杯目を注ぎ
これも瞬く間に呑み干す女
この度は自分が呑むとようよう盃をもぎ取り手酌酒の男
常は呑まぬそうなれど
こんにちのことなれば一つ呑むそうでござる
これで夫婦の盃を交わせたと喜ぶ男
酒盃を仕舞うて戻ればいよいよ…