狂言『因幡堂』にはわわしい女がござる
和ろうてござるか~
わわしい、と云う言葉は室町時代のことばでござろうか
いまの世では通じるものではないと存じまするが
「賑やかである」「騒々しい」「軽はずみである」「口うるさい」
といった意味だそうでござる
あまり良い意味で遣わるることばではないようでござるが
狂言に登場する女性の多くがこの「わわしい女」と表現されまする
ほんとうにそうなのでござろうか
妻を求める男がシテでござる
女性の登場する狂言の一つに”妻乞いモノ”がござる
これは独身の男が、神仏の助けを借りて妻を授けてもらおうとする話でござる
その中から、今日は狂言『因幡堂』を取り上げようと存ずる
独身の男が妻を乞うと申してござるが
この狂言のシテ(主役)は妻のいる男でござる
あろうことか、この男は妻が親里へ里帰りしている隙に
’暇(いとま)の状’すなわち離縁状を送り付け
強制的に独身となって妻を授けてもらおうとするのでござる
男が申しまするには
これが額面通りの妻でござれば
あら気の毒や、おいたわしやと思うところではござる
この時代の夫婦のありようが如何なるものでござったか
未だ研究不足でようはわかりませぬが
まずはこの男の申しようのママ、話を進めようと存じまする
まずは常座で名乗りでござる
本舞台に出、常座(舞台左奥)に立って常のごとく名乗りに続き
里帰り中の妻に離縁状を送ったと申す男
とは云え一人でいるわけでは格好が付かぬと
新しい良い妻を授けてもらおうと
因幡堂と申す寺の観世音菩薩に祈願に向かうのでござる