あきの新宿
少しだけ 秋が近づいているような気配を感じている。
最近酒を飲むと、
「ああ、いつまでこんなことができるんだろう」
とか悲哀に満ちた気持ちになる機会が増えた。
酒を飲んだ翌日は二日酔いでグダグダになった体とアルデヒドを代謝出来ない気持ち悪さで最悪な気分になるのだが、それでも誰かと酒を酌み交わすという最高のエクスタシーを言い訳に美味くもない酒を体内に入れる。
人はつくづく馬鹿な生き物だとも思う。
ふらりと新宿に行ってみた。
歌舞伎町という街は何度来ても様々な人がいて、どんな目的で何処へ向かっているのだろうと思わせる程、人種も性別も年代も全部網羅できるんじゃないかと思うぐらいの人数がいる。
その中でポツンと立ち尽くしてみる。
小雨が降っていた。
キャッチの男やガールズバーの看板を掲げた女、街を撮影する外国人。
そんな動きを無視するように煌々と光るネオンの看板。
そう、誰も自分なんか見ていない。
そこには新宿という街に惹かれ、新宿を楽しもうという人たちだけが屯している。
東京のこういう無機質なところがとても好きだ。
満員電車とは言えないほどの電車に乗って周りを見れば、TikTokで韓国のアイドルグループのダンスを見る女性や友達にLINEを送る人やパズルゲームをする男や席に座りながらうつらうつらする男。
みんな何処へ向かうのだろう。どんな人たちとこれから過ごすのだろう。仕事は何をしているのだろう。
色んな思いを巡らせながら家路につき、そして部屋ではまた1人。
別に酒はいらない。
自分が欲しいのは明日を生きる目標。
なぜ自分がここにいるのかという問いに対しての答え。
そんなもの分かるはずないまま垂れ流しのテレビは大谷翔平の50-50を讃える。
外は霧雨。ルームライトをつけて部屋の明かりを消し、何事もなかった今日は終わりを告げる。
こうしてまた1日ずつ秋に近づいて行く。
まだ眠くないな。
ここまでで777文字。明日はなんかいい事が起こるだろうか。