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脊椎圧迫骨折の病態とリハ

PTけんしん です。

圧迫骨折の患者さんを担当して
「リハビリ頑張ったら逆に悪くなった」
なんて言われたくないものです。

本、文献、勉強会より
サクッと圧迫骨折が理解できて
明日から役立てるように書いていきます。

3週間は圧潰(あっかい)進む圧迫骨折。

なにも治療しないと
椎体の前の方が潰れて
どんどん背中が丸まってしまいます。

かと言って

受傷直後の
誤ったトレーニングは逆に悪化。

ほうっておいても悪くなるし
病態知らずにアプローチしても
悪化してしまう。

だけど病態を知っていれば
必要以上にビクビクせず
アプローチできると思います。

本当かな?

と感じるかもしれませんが
最後まで読んで確かめてみてください。

①圧潰(あっかい)する原因
②骨癒合を邪魔しない
③背筋弱化は後弯変形させる

この3つに絞って話します。

①圧潰する原因

それは
・骨がもろく
・傾いてるから

『骨がもろい』を
専門用語へ変換すると
骨粗鬆症(こつそそうしょう)です。

骨を鉄筋コンクリート
に例えると分かりやすいです。

左:正常 右:骨粗鬆症

骨密度はコンクリートで骨質は鉄筋に似てる。

骨粗鬆症といえば
「骨密度が低いんでしょ」
とイメージできますが、

実は鉄筋にあたる骨質が悪くても
骨折しやすいんです。

そして、大抵は骨粗鬆症で骨がもろいから
圧迫骨折になってしまうんですね。

【豆知識】
骨の強さは骨強度と呼ばれていて
骨粗鬆症は骨強度が落ちて簡単に骨折してしまう状態。
その骨強度は骨密度と骨質が関係してます。

骨が丈夫なら尻もちついたって折れません。

だけど骨粗鬆症になってるから
ちょっと転んだだけ、とか
あきらかな受傷機転ないのに
骨折してしまうんです。

さらに
骨折して骨が固まってないうちに
丸まった姿勢だと
さらに潰れてしまいます。

傾くほど潰れてしまう

建物でイメージすると分かりやすいですよね。

骨の外は硬くても
内側がスカスカなので
中から崩れてく…

神経は骨の外側
骨膜についてるので
中が崩れるだけじゃ痛くない

だけどコンクリも鉄筋も崩れれば
外壁(骨の外側)も壊れてきます。

骨膜が損傷されれば
めちゃくちゃ痛くなるわけです。

痛い時には
すでに圧潰してるケースが多い。

だから早期発見、早期対策が大事。

何をすれば良いかと言うと…

骨がもろい(骨粗鬆症)⇒骨を丈夫に

傾いている⇒コルセットで矯正 and 背筋で支える

骨を丈夫にするためには
骨粗鬆症を
知っておきましょう。

他の骨折にも役立つので
知っておいて損はないです。

いや〜眠くなりますね。

だけど、何をすればいいか?
そんな視点で見ると役立ちます。

青で囲んである加齢とホルモンは仕方ないとして
緑で囲んである生活習慣、ビタミンD、K不足は
なんとかできそうですよね。

運動と食事で

ちなみにビタミンDは日光浴でも生成されます。

それと重要なのは
赤で囲んである『骨形成』

骨形成を調べると
骨のリモデリングが出てきます。

骨に荷重がかかると
骨の吸収と形成…リモデリングが起きて
骨が丈夫になるんです。

「本当に荷重かからないとダメなの?」

と思いますよね。
骨の中見えないですし。

宇宙飛行士の興味深い話があって

宇宙飛行士は
宇宙でも運動欠かさず
栄養も考えられてるのに
骨がもろくなります。

鍛え抜かれたカラダで
宇宙でも運動してるのに
6ヶ月後、地球に帰ってきて検査すると
骨がスカスカ。

それは無重力空間で
骨に荷重がかからないから。

骨を丈夫にするには
荷重が欠かせないわけです。

ちなみに1日8,000歩、週3日以上で
骨密度が改善すると言われています。

入院患者さんにとって
8,000歩はハードル高いですが
できるだけ歩数を減らさない
できれば増やすのがポイント。

ここまでが骨粗鬆症対策でした。

圧潰(あっかい)する原因は
・骨がもろく
・傾いてるから
でしたね。

では、もう1つの原因
『傾いてるから』の話。

イメージとしては
傾いたビルを真っ直ぐにすること。

ある程度、鉄筋コンクリートが
しっかりしてても曲がってたらメキメキっと
壊れそうですよね。

過度な後弯はダメ。

そうです。

・コルセットを巻いて良い姿勢でいる
・背筋で支える

その中で適度な荷重を加えることが必要。

背筋の話は ③背筋弱化は後弯変形させる でします。

②骨癒合を邪魔しない

特にコルセット完成するまでの注意点は
骨癒合を阻害しない。

たとえば
寝てる姿勢でカラダを丸めたり
反ったりするのは危険。

なぜなら
骨折部が動いて骨癒合を
邪魔してしまうから。

円背の人がベッドをフラットにして寝たらNG
少しギャッチアップするか側臥位へ

寝返りでカラダをひねったら
椎骨が回旋転移しちゃうからNG
丸太様の寝返りを教える

体幹屈曲しながらの起き上がりは
圧潰してしまうのでNG

⇒ベッドのギャッチアップを使いましょう。

臥位での下肢exは
意図せず骨折部が動いてしまうから注意。
⇒やるなら骨盤をしっかり止めてやりましょう。

靴履いたり、かがんだりするのもNG
⇒靴べら使うか介助

そして忘れちゃいけないのが
過度な安静はNG
⇒適度に荷重しましょう

なぜなら骨形成を促すからです。

宇宙のときの話を思い出してください。

大腿骨頸部骨折でも
膝蓋骨骨折でも
骨をくっつけるには荷重が必要。

コルセットが届いたら
正しい姿勢で荷重をかける。

③背筋弱化は後弯変形させる

背筋が弱くなれば
さらに脊柱は後弯して
圧潰も進行してしまう…

ヤバイですね。

背筋を弱くしてはいけないわけです。

でも臥位でのトレーニングは危険を伴うので
コルセットが届いたら
まずは立位で背筋を鍛えた方が良い。

この方法だと
臥位よりも安全に運動できます。

なぜ安全なのかと言うと
重力が真上からかかり、
骨折部が噛み合うからです。

背筋が弱化する原因は
長期臥床による筋力低下以外に
『癒着、瘢痕化』がある

ここを見落としやすい。

骨折すると炎症反応が起こります。

脊椎の近くには
多裂筋など脊柱起立筋があるので
癒着(ゆちゃく)、瘢痕化(はんこんか)しやすいわけです。

いくら筋肉が太くても
筋肉と筋肉が滑走しなければ力が出ません。

その状態が長引けば
不使用による筋萎縮により
さらに弱くなってしまいます。

コルセットで1ヶ月くらい固定していれば
骨折部以外の皮下組織や筋肉の滑走も
悪くなるので要チェック。

3〜4週で骨癒合してくるので
ドクターに骨癒合の状況と安静度を確認して
叩打痛テストで問題なければ
肩甲帯や骨折部近くにもアプローチできます。

この確認で差がつく。

骨癒合してないのに
骨折部が動きやすいexしてしまうと
疼痛を引き起こしやすいし
骨がくっつかない。

だけど骨癒合が進んだら
痛みが強くならないか確認して
少しずつ負荷を上げていけば、

必要以上にビクビクせず攻めた介入ができる。

具体的には…

皮下組織や筋の滑走を
改善させてから
多裂筋や最長筋、
僧帽筋中部、下部などの背筋ex

そうすることで
ただ筋トレするよりも効果的になります。

前胸部(大胸筋、小胸筋など)の拘縮は
脊柱を後弯させる原因になるので
そこを改善させるのも大切。

まとめ

①圧潰する原因は骨がもろく傾いてるから

②骨癒合するまでは骨折部を固定
 良いアライメントで荷重
 1日の歩数を増やす

③背筋弱化させないために
 骨癒合前は立位で背筋ex
 骨癒合後は前胸部の拘縮除去
 筋の滑走を促し具体的な背筋ex

ここまで読んでくれて
ありがとうございました。

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