平沢進、と私
やる気があるうちに書いていきましょうねぇ~。
(サムネイル引用元:ASCII.jp:平沢進が語る、音楽の新しいスタンダード (1/5))
私と交流のある人なら誰もが聞いたことがあるだろうアーティスト、平沢進。80年代P-MODELというバンドのリーダーとして活躍し、Plasticsやヒカシューと共にテクノ御三家と呼ばれテクノブームの火付け役となり、一躍有名になった。80年代後半からはバンドと並行してソロでも活動を始め、2000年には「培養」という名でP-MODELは事実上の解散となった。
ソロ活動開始から現在に至るまで平沢進は14枚のオリジナルアルバムを発表し、最も新しいアルバムの『BEACON』は21年発売と、4月で68歳となった彼は今でもバリバリ現役なのだ(すごい!)。
(参考:平沢進ディスコグラフィー|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site)
私にとっての平沢進の一番の魅力は、何と言ったって彼が持つ独特な世界観。その世界観はそのまま音楽に反映されていて、歌詞と音、ともにとても独創的で、不思議な質感になっている(私自身あまり音楽を聞いてこなかったので彼が本当に唯一無二の「独創性」を持つかは異論の余地あり)。
まず歌詞がすごく独特で難しい。一度聞いただけではもちろん、何度聞いたって何を歌っているのかよく分からない曲も多い。というよりかはほとんどがそう。例えば『白虎野の娘』の一節
「マントルが饒舌に火を噴きあげて捨てられた野に立つ人を祝うよ 静かな娘の視野で見知らぬ都に灯がともり出す」
ん~独特(この曲に関してはまたいつか考察noteを書こうと思ってる)。
『現象の花の秘密』
「道を継ぎ橋を架けなお自在 さて空は落海は涸れ予断なく 反射する描写する物語 ただ始まりの幕を切るキミがいた」
ん~難しい。
こんな感じで一筋縄ではいかない歌詞を書くわけだが、でもそれは、ただ難しい言葉を使って気取ってるわけじゃないってのはわかってほしい。彼は頭の中にまず視覚的な映像が浮かんで、それをもとに歌詞を書いてるんだって(どこで言ってたか忘れちゃった…)。視覚情報を無理やり言語化しようとすると変に冗長になってしまうし、逆に単純化しすぎると正確な形で表現することができなくなってしまう。だから彼の書く歌詞はすごく難しく感じるようになってると思うんだ。
それでも平沢はすごい言葉の使い方が上手だから聴いていて全く不快じゃないし、理解できなくても音が面白いから「なんとなく」で楽しむことができる。音楽って割となんとなくで聴くことも多いじゃない?歌詞は二の次で、音楽のテンポとかメロディとかのノリだけで聴く感じ。
そう、平沢の曲は歌詞が面白いだけじゃなくて、メロディもすごく魅力的。彼はバンド時代は電子音楽をやっていたけど、ソロからはだいぶ変わって「ワールドミュージック」みたいなジャンルに路線変更した(これは正確には正しくないかもしれない。彼の音楽にはジャンルが無くて、「平沢進」そのものがジャンルであるって言った方がいいかも)。平沢の曲で何より特徴的なのは、彼自身の声や他の人の声を何重にも重ねて作ったコーラス(彼はそれをバカコーラスと呼ぶ)。その音はこれまで聞いたことがないような、楽器やコンピュータだけでは表現しきれないものを奏でてくれるため、聴いていて想像力が掻き立てられすっごく面白い。こればっかりは聞いてもらうのが一番良いと思うので、気になった方はぜひいくつかチェックしてみるのをおすすめする(『白虎屋の娘』、『聖馬蹄形惑星の大詐欺師』、『Siren(セイレーン)』、『Simcity』など)。
はい、平沢の説明はこの辺にしときます。こういう自分の好きなものを紹介するってほとんど初めてな気がするけど、すごく難しいね。
じゃあ後半、私と平沢進の出会いについて。
出会ったのは忘れもしない、高校二年生頃の冬12月。ツイッターのフォロワーさんのリツイート。それは一枚の絵で、クレヨンしんちゃんが赤くて怪しい空間を歩いていて、その後ろを怪物たちがパレードの行進のようについていく。その絵には文字が書かれていて、それが私の関心を惹いた。
「さあ異臭を放ち来る君の影を喰い 恐怖のパレードが来る君の名の下に」(元ツイート:https://twitter.com/kadikadisake/status/447035555117678592?s=21&t=mB34xsaDpGOmw1MwV3oGXQ)
絵の端には「パレード 平沢進」と書かれていたため、すぐにネットで検索したところ、彼の『パレード』という曲がヒットした。私はYouTubeでそれを聴いた(https://youtu.be/VFcQ3gI4IDo)。
すると前奏の部分からもうインパクトがすごい。聴いたことがない音(これがバカコーラス)、何とも言えない怪しい雰囲気、魅力的だった。そして歌詞も、とにかく怪しくて、怖かった。でもそれが魅力的。メロディも、本当に何かの行進の音楽みたいで不思議な感じ、すごく魅力的。そして聴き終わったときの私の感想は…
「気持ち悪い!!!」
なんだこの曲は!と。今まで触れたことがない「何か」に出会ってしまったがために、本能が危険信号を発した。
「でも、なぜかどうしてか、惹かれてしまうな…」
これは完全に怖いもの見たさの感覚。苦手なのに恐怖映像やホラー映画を観てしまう感覚。次に聴いたのは『RIDE THE BLUE LIMBO』。これは『パレード』と違いMVがついていた(https://youtu.be/d6lWxprkKtA)。そして見終えた感想は
「好きかもしれない…」
たった二曲だが、私の中には平沢進の曲への抗体が形成され、拒絶反応はほとんどなくなっていた。そしてそれから、私のこれまでの音楽観が音を立てて崩れた。ハンマーでちょっとずつ壊していくのではなく、ロケットランチャーでぶっ飛ばしたように。
それからというもの、私はほとんど平沢進しか聴かずに今まで生きてきた。もう五年以上になる。それだけ、彼の音楽は人を選びはするものの、はまる人にはたまらないくらいの魅力を孕んでいるものなんだ。もちろん彼の魅力は音楽だけではなく、その人間性やライブのパフォーマンスなどにも表れているけど、それについてはまた別の機会に話そうと思う。
平沢進、私の人生に、少なくとも私の思想にとても大きな影響を与えたアーティスト。私は彼の曲を死ぬまで聴き続けるつもりだ。
≪あとがき(あとがきとは生意気な)≫
書き終わるのに2時間半くらいかかりました。前途多難。
けど楽しかったので、これからも続けていきたいと思ってます!
最後まで読んでくれたならありがとう!!また書くかんね~。
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