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森での一夜

毎日頑張っているのにやらなければいけないことはどんどん増えて、「どうしよう?どうしよう?」という思いで頭がパンクしてしまうことはないだろうか?最後には、何も考えたくなくなって思考が停止する経験をされた方は多いかもしれない。
仕事や勉強をしている時、僕も慌てふためいて、何もかもが嫌になることがある。ただ、カナダの森で一晩過ごす経験してから、慌てている時ほど深呼吸が大事だと気づいた。ぜひ、ゆっくり深く呼吸してみてほしい。慌ただしく感じているのは、自分だけで時間はゆっくり、穏やかに流れていることに気がつくはずだから。

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カナダの林業学校で勉強している時、パニック状態になってしまう時が多々あった。上手くコミュニケーションが取れなかったり、クラスの内容がさっぱりわからなかったりと、入ってくる情報量と慌てふためく自分の感情で頭が破裂しそうだった。
そんな状況の中、カリキュラムの一つとして「ブッシュクラフト」というクラスを受講した。ブッシュクラフトというのは、自然の中にあるものを利用して、森や自然の中で過ごすための技術。クラスでは、木の枝、倒木や葉を利用して寝床を作り、風避けを作ったりとナイフ一本でいろいろなことができることを学んだ。最終課題は、森で一晩一人で過ごすこと。この森で一晩過ごして、呼吸の大切さを実感してから、慌てていてもパニックになることが減っていった。

◆カナダの森で一晩過ごす

最終課題の当日、GPSを片手に自分が一晩過ごす場所まで移動した。キャンプ場のように泊まるための準備は何もなく、ただただ森の中。僕の滞在する場所は、Hardwood(広葉樹)の特にWhite Birch(白樺)に囲まれた地域。クラスメイトとは、数百メートル離れて、声も聞こえず姿も見えない。
夜まで5時間ぐらいあったけど、日が落ちるまでにブッシュクラフトの知識を活かして寝床と風避けを作り始めた。前日に雨が降ったので気温も低くて、手袋をしていても手がかじかむ。11月のカナダの森は、雪がなくともとにかく寒い。一晩過ごすために焚き木用の木を集めに行ったが、どれも湿っている。焚き木も中々集まらない。事前に計画していたのとは違い、全く思い通りにいかない。
「やばい、やばい」
一人で一晩過ごす準備をしなければならないのに時間がどんどん過ぎていく。夜が来て12時頃、十分な焚き木がなく火が消えそうになり、朝まで暖をとるために木を集めに行った。少し離れたところに白樺があり、この剥がれかけた木の皮がとてもよく燃えるので取りに行こうとGPSを持たずに焚き火を離れたのが悪かった。数歩進んだだけなのに真っ暗闇で何も見えない。一瞬でパニックに陥った。
「落ち着け、落ち着け」
何度も自分に言い聞かせる。隣のクラスメイトとは距離が離れているし、声は届かないだろう。間違えた方向に進み続けたら、この暗闇ではアウトだ。
「どうしよう、どうしよう」
慌てふためいていたけど、一度深く呼吸する。目をつぶってゆっくり深呼吸を繰り返す。何分ぐらい立ったのだろうか。少しずつ落ち着きを取り戻して、目を凝らす。何メートルか先にわずかに炎が揺らめいていた。その炎を目指して走り出す。焚き火にたどり着いた瞬間、安堵で涙が出た。
結局、朝まで眠れずに6時頃、早めに集合場所へ行った。クラスメイトのトーマスがもうバスを待っていた。帰りのバスでは、一晩中焚き火の前で過ごしたせいで、皆むせ返るほどけむり臭かった。眠くてけむり臭かったが、満足感で満たされていた。寮に戻ってシャワーを浴びて、ベッドにもぐり込んで泥のように眠りこけた。

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日々の生活の中で、慌てふためいてしまうことは避けられない。パニックになってしまうかもしれない。そんな時は、ゆっくり、深く呼吸してみてほしい。時間は、ゆっくり動いている。目をつぶって何回か呼吸してみる。少し気分が楽になるかもしれない。


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