102番 当帰湯(とうきとう)
私、いちおう循環器内科医ですので、狭心症にはそれなりの思い入れがあります。基本、心カテや冠動脈CTで狭窄病変を評価して、きちんと診断治療をしたい。
とはいえ、検査も難しいほどADLの下がった患者さんや、「絶対に大きな病院に行かない!!」と言われる患者さんには困ります。
西洋薬でやれることはやった上で、漢方薬はないのかとなると、半夏厚朴湯、桂枝茯苓丸、木防已湯、そして今回取り上げる当帰湯。
ただし、当帰湯については、「真の虚血性心疾患ではない仮性狭心症やいわゆる肋間神経痛などの胸痛に適応される漢方方剤」となっています。
冠動脈疾患ではない胸痛に対応できるのも、循環器内科医の懐の深さの指標になると思う今日このごろです。
使用目標(証)
本方は、比較的体力が低下し、四肢冷感を訴える人の、胸腹部から背部のかけての持続性鈍痛あるいは発作性の疼痛を目標に。腹部は特定な所見は少ないが、腹壁の緊張が弱く、腹部膨満感、鼓音を認めることがある。一般に、背部の冷感、腹部膨満感、腹痛、胸痛、背部痛、鼓腸、放屁などを伴い、これらの症状はしばしば心因、寒冷によって誘発・増強される。
組成
当帰(とうき);補血
半夏(はんげ);補気・理気
桂皮(けいひ);温め
厚朴(こうぼく);補気・理気
芍薬(しゃくやく);補血
人参(にんじん);脾胃に作用
黄耆(おうぎ);補気・理気
蜀椒(しょくしょう);山椒=温める薬
甘草(かんぞう);脾胃に作用
乾姜(かんきょう);温め
勝手にポイント
心窩部痛、腹痛、冷え症に使う。
お腹が動かないと大建中湯と考えがちだが、血虚や冷えが強ければ当帰湯の方がよい。
参考資料
「つまずきから学ぶ漢方薬 構造主義と番号順の漢方学習」 岩田健太郎 著 / 西本隆 監修
「漢方製剤 活用の手引き 証の把握の処方鑑別のために」 長谷川弥人 大塚恭男 山田光胤 菊谷豊彦
漢方スクエア 方剤解説 当帰湯