85番 神秘湯(しんぴとう)
フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグが書いた「OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び」という本があります。(といって読んでないんですけど…)ポイントは、「最良の選択肢(オプションA)がかなわない時に、次善の選択肢(オプションB)にどう向き合うか」
薬剤選択にも同じことが言える。ホントはこれが使いたいんだけど、副作用で使えない、値段が高いから使えない、腎機能が悪いから使えない… そんな時に、「次善の選択肢をそれだけ持っているかが、プロがプロと呼ばれる所以だ」みたいなことを尊敬する岩田健太郎先生がどっかで言ってたはず。
咳に使う漢方でも、いちばん有名なのは麦門冬湯(29)ですが、湿った咳ならあまり向かない。水性喀痰なら小青竜湯(19)、膿性痰なら清肺湯(90)、咳で胸が痛くなるなら柴陥湯(73)、喉になにか引っかかったそれを出すような咳なら半夏厚朴湯(16)、胃腸が弱く長引く咳なら参蘇飲(66)、標準的な咳嗽の薬と言えば五虎湯(95)などなど…
今回とりあげる神秘湯は、柴朴湯(96)より、やや軽めの咳の人に使う漢方薬です。
使用目標(証)
本方は、体力中等度あるいはそれ以上の人の、咳嗽、喘鳴、呼吸困難を目標に用いる。喀痰の少ない場合が多く、抑うつ傾向を伴うことが多い。腹部は腹力中等度で、肋骨弓下部の抵抗・圧痛(胸脇苦満)を軽度に認める。
組成
麻黄(まおう)
杏仁(きょうにん)
厚朴(こうぼく);乾かす薬
陳皮(ちんぴ);乾かす薬
甘草(かんぞう)
柴胡(さいこ);熱を取る
蘇葉(そよう);表を発する
勝手にポイント
喘息などの呼吸困難に使う薬。
柴朴湯(96)にも似てるが、より実証の患者、呼吸困難が弱い患者に使う。
麦門冬湯(29)は乾いた咳を潤すが、神秘湯は厚朴、陳皮といった乾かす薬が入っていいるのが違い。
参考資料
「つまずきから学ぶ漢方薬 構造主義と番号順の漢方学習」 岩田健太郎 著 / 西本隆 監修
「漢方製剤 活用の手引き 証の把握の処方鑑別のために」 長谷川弥人 大塚恭男 山田光胤 菊谷豊彦
漢方スクエア 絵でわかる漢方処方解説 神秘湯
漢方スクエア 方剤解説 神秘湯