拙速

私がまだ会社に勤めていた頃のお話。
私はとある仕事を丁寧に仕上げていました。
技術職だった私は自分の仕事に付加価値をつける方法が、丁寧で正確にするしかありませんでした。
なので、常に仕上がりは120%の完成度を目指していました。
そのおかげもあって、顧客からは信頼され、それなりに売り上げにも貢献していました。

そこ頃、ITバブル全盛期だったため、色々な企業の社長がテレビで経営について語ったりしていました。
その中に孫子の兵法を用いた「拙速にすべし」という内容を語った方がいました。
完璧な商品を時間をかけて仕上げるより、80%の出来でいいから素早く納品した方が売り上げが上がるというものです。
そして、それを見た私の上司が、私の作業は遅いと文句を言ってきたのです。
顧客の私に対する信頼は、丁寧で正確という付加価値にあると思っていたので、私は聞き入れずにそのままのやり方でやっていました。
すると私のやり方が気に入らなかった上司は、私の仕事を別の人間に担当替えしてしまいました。
新しい担当は、それはそれは素早く仕事を仕上げました。
速度は2倍。品質は1/2。
怒った顧客は二度と仕事を出してくれませんでした。

拙速であることが大事である場面もあるでしょう。
しかし、顧客が納期にこだわらずに品質にこだわっているのに、速度を優先した仕事をしたらそりゃそうなるでしょうね。
私はこの一件以来、早さより丁寧さに重きをおいて仕事をしています。

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