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花粉症と漢方薬について

漢方薬の基本的な概念に「寒熱」という考え方があります。つまり、身体が(平常な状態に比べて)冷えてしまっている状況の時は温める働きのある生薬で構成されている漢方薬を服用する。

逆に身体が熱せられしまっている状況の時は冷やす働きのある生薬で構成されている漢方薬を服用する、というものです。
花粉症の場合も、その症状により、「寒」「熱」のどちらなのかを判断し、漢方薬を使い分けます。

1.
(平常な状態に比べて)身体が冷えてしまった状態の花粉症

(1)症状
くしゃみが良く出る・水のようにサラサラとした鼻水がたくさん出るという症状が、身体が冷えてしまった状態の花粉症の症状です。

(2)有効な漢方薬
こんな症状の時には、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などの、身体を温める働きのある漢方薬を使います。
 
(3)参考
身体を温めることが良いわけですので、こんな症状の時は、物理的に身体(特に下半身)を温めただけでも症状は緩和します。また、温める働きのある食べ物がお勧めです。
具体的には、しょうが・紫蘇(しそ)・カラシ菜・太ねぎ(白い部分)。

2.
(平常な状態に比べて)身体が熱せられた状態の花粉症の症状

(1)症状
かゆみ(目・のど・鼻・耳など)・目が赤くなる・目やにが出る、と言う症状が身体が熱せられた状態の花粉症の症状です。

(2)有効な漢方薬
こんな症状の時には、銀翹散(ぎんぎょうさん)や越脾加朮湯(えっぴかじゅつとう)などの、熱せられてしまった身体を冷ます働きのある漢方薬を使います。

(3)参考
こんな状態の時にお勧めの食べ物は、薄荷(はっか)・ハトムギ・大根・セロリ・小豆(あずき)・冬瓜(とうがん)・昆布・シジミ。

3.
以上の2つのタイプにより、飲む漢方薬を使い分けます。


漢方薬は、口が乾燥したりとか、眠くなると言った副作用がありませんし、即効性(1回飲んだだけでも効果がある)も十分に期待できます。

4.
花粉症の「症状にきく」漢方と「アレルギー体質緩和」の漢方は違う


ただし、以上の漢方薬は、花粉症の症状に対して効果のある漢方薬と言うことであって、花粉症というアレルギー体質を緩和してゆく漢方薬ではありません。その働きのある漢方薬は別のものです。

5.
病名ではなく症状を見極めて使うのが漢方の考え方

また、上に出てきた、小青竜湯・麻黄附子細辛湯・銀翹散という漢方薬は、風邪や喘息(ぜんそく)などの時にも使われます。
病名が違うのに同じ漢方薬が使われる理由は、病名は違えども身体に同じ状況が起きていれば同じ漢方薬を使うと言うことです。

すなわち「冷えていたら温めてやる」、「熱せられてたら冷やしてやる」という漢方の原則的な治療法の1つである「寒熱(かんねつ)理論」に基づいて病名が違っても同じ漢方薬が使われるのです。

以上、今回の内容でした。

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─[執筆者]───────────────────────────
■長澤 昭(ながさわ あきら)1952年 静岡県生まれ。
1980年に薬局を創業。漢方の健康堂薬局にて痛み・
シビレの症状を中心に漢方の研究を重ねて40余年。
HP https://www.kenkodo-igaku.jp/
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