映画「シンドラーのリスト」は全人類が見るべき名作
とてつもない映画でした。個人的な好みを超越して、全人類のための宝物と言い切れるほどの強い衝撃を受けました。
ので、衝動に任せて初めてnoteを投稿してみます。
感銘を受けた以下の3つのポイントについて、思ったことを書き連ねていきます。
①映像作品としての覚悟
②等身大のヒーロー
③後知恵バイアス・正常性バイアス
①映像作品としての覚悟
救いがなく淡々と流れていく映像は、ホロコーストがどのようなもので何が行われていたかを文章や写真で学び、知った気になっていた自分への強烈な一撃となりました。
映像の力は凄まじいですね。文章では自分の想像力を越えられず、写真では結果しか見ることができないなか、リアリティとコンテスクトを併せ持つのが映像です。
この映画を見ている最中は、むごいとか非人道的というこれまでの認識を大きく凌駕して、論理も倫理もない強大なナンセンスへの絶望や諦念に押しつぶされそうでした。
あまりの生々しさに、正直なところ中盤以降精神的にはめちゃくちゃ擦り減らされるわけですが、
これこそがこの映画の大きな意義だと強く感じています。
ホロコーストを描いた映画は今までいくつか見てきましたが、ここまで生々しい凄惨さをベースに話が展開されているものは初めてでした。
なぜ映画としてこの話を描くのかという大前提を考え抜いた上で、映像が持つ力を最大化するためにコンテスクトを丁寧に描きつつ、デフォルメのない史実の描写を徹底していることが強く印象に残りました。
②等身大のヒーロー
話の本筋であるシンドラーについても言及すると、このシンドラーの描き方も特徴的だと感じました。
このような類の話は往々にしてヒーローを神格化してしまいがちです。その方がメッセージは簡単に伝わり、観客も入っていきやすいですからね。
ただこの映画は違っていて、むしろ終盤に差し掛かるまでは金と女と立身出世にしか興味がない、なかなかクセのある人物として描かれています。
ただ、このように先鋭化する集団のなかで、シンドラーが良くも悪くもこのような人間味を持って生き続けたこと、それ自体が人間性への期待であると感じられます。
日々何も考えずに過ごしていると組織や周囲が流れる方向に流れていく、そんな付和雷同で事なかれな生き方になってしまいがちですが、これではSSと本質的なところでは何も変わりません。
シンドラーは、事なかれ主義者のように周りとの摩擦を巧みに回避しつつも、欲望にも良心にも忠実に従って行動しており、そのような和とエゴの止揚こそが人間性であり、時代を超えて追求すべき価値観ではないでしょうか。
③後知恵バイアス・正常性バイアス
歴史の結末を知っている我々から見ると、ユダヤの人たちはゲットーに集団移動させられた時点で、なぜ命をかけてでも国外へ逃げ出さなかったのか、などと思ってしまいがちです。
これはいわゆる典型的な後知恵バイアスで、まさか数年後人類史上類を見ない大虐殺に至るなんてことは当時予想もつかないわけです。
不穏な情勢であるとは感じていても、生まれ育った国や財産をかなぐり捨てて無一文から見知らぬ土地でやり直す、という決断ができた人はごく限られた一部だったでしょう。
国家がそのような極めて非人道的な政策を公然と行うということ自体、考えたくもなかったと思います。
この映画を通じて、時系列でことの成り行きを見ている中で、自分自身そのような当時の人の感覚に重なるところがありました。
これ以上の悪いことにはならないだろうという願いにも近い想い。これは所謂正常性バイアスと呼ばれるものですね。
そしてこれらの話は現在の我々にも全く無関係ではありません。
最近、奇しくもこの映画の舞台でもあるドイツでは極右政党の躍進が見られます。現時点では、所詮一地方選挙の結果に過ぎないという見方も多いように思われますが、本当にそうでしょうか?
これが正常性バイアスでないと言い切れるでしょうか?
ナショナリズムの台頭はナチスが躍進した当時の情勢とオーバーラップします。また、現在は正にユダヤ人の国であるイスラエルと周辺諸国との衝突激化をもとに国際社会の意見の対立も顕在化しつつあります。
歴史の流れのなかにいる一個人として、集団化した人間は大きく道を誤ることがあるという教訓を改めて見つめ直し、
世界情勢楽観論への警鐘ともう道を違えたくないという人間性へのある種の讃歌としてこの映画はこれからも求められ続けるでしょう。
、ということで
最後はやや説教臭くセンシティブな話題にも触れることとなってしまいましたが、いずれにせよ「シンドラーのリスト」は人類史にて語り継がれるべき、そして現代に生きる人こそ見直すべき素晴らしい名作だと感じました。
3時間以上というなかなかに重たい作品ではありますが、休日に腰を据えて正面から向き合って鑑賞いただければ幸いです。
素人の乱文を最後までお読みいただきありがとうございました。
けん