日本一のミートソースと噂のお店は接客も日本一だった

食事の時の会話が弾むと、食べている物も美味しく感じる。
食べている時間があっという間に過ぎてしまう。
もっとこの時間を楽しみたい、けれども料理を食べ終わってしまったから、名残惜しいけど退席しないと。
それほどまで思ってしまうほど、食事で会話が弾めば至福の時間がそこにある。
料理が美味しければなおのことだ。
そして料理が美味しいお店ほど、大抵は食事の時の会話も弾むものだ。

お昼時、美味しいと評判のイタリヤ料理屋に入った。
男性の店員さんが笑顔で出迎えてくれた。
その笑顔を見て1秒足らずで「この人イケメンだ」と思ってしまった。
それくらい爽やかな笑顔だった。
「初めてのご来店ですか?」
お? 店員さん、初めて来店した人に毎回こう話すのだろうか?
店員さんはお店のメニューの説明をしてくれる。
「当店のおすすめはミートソースです。あと日替わりのパスタもございます」
店員さんはメニューを示しながら説明してくれる。
メニューには、日本一のミートソース、と書かれていた。
おすすめと言われたら食べないとな、と思いミートソースを注文する。
店員さんは元気な声と笑顔で受け答えしてくれた。

店内の様子をさらっと見渡してみる。
カップルや女性グループ、家族連れ、おひとりさま、様々なお客さんがいた。
キッチンに目を向けると、調理担当が2人手際良く料理を作っている。
二人とも素人目で見ても手つきが良く、料理を作る姿を見ていると楽しい。
ホールには、先程のイケメン店員と女性の店員が笑顔で応対していた。
グラスの水がなくなりかけたとき、イケメンの店員さんは笑顔で注いでくれる。
このイケメン、まじでイケメンだ。
あまりの気配りの良さに感激してしまう。
女性の店員さんは、コートを忘れたお客さんにコートを届けに行っていた。
しかもお店を出る前に。
気配りがしっかりしている2人組だった。

サラダを食べ終わる少し前、お楽しみのミートソースが運ばれてきた。
大きなお皿に程よい量で盛られたパスタ。
赤茶色に彩られたミートソース。
香ばしい香りがする。
思わず何度も写真を撮ってしまった。
まだサラダも食べ終わってない。
このままではミートソースが冷めてしまう。
でも、マスカットが入っているサラダも捨てがたい。
ゆっくり味わいたいくらい美味しい。

ようやくお目当てのミートソースを食べる時、ちょっと冷めてしまっていた。
パスタをミートソースに絡めて食べてみる。
あれ、冷めていても美味しい。
このソース、程よい感じにチーズが絡まっている。
あまりにも美味しくてミートソースを食べるのがもったいないくらいだ。
「お味の方はいかがですか?」
イケメン店員さんがそれとなく聞いてきた。
素直に、ミートソースは食べるのがもったいないくらい美味しい、と伝えた。
「それはよかったです。ソースにチーズを絡めているんですよ。ランチではソースに絡めますが、ディナータイムではバスタに絡めているんですよ」
どうやら昼と夜とで作り方を変えているらしい。
さらに、それとなくディナーでも利用して欲しいと仄めかしている。
このイケメン店員、営業うまいな。
イケメン店員と会話がどんどん弾んでけたけれど、私の目線がパスタに向いたら、すぐその場から離れるイケメン店員。
食事を楽しんでいただきたいサインだった。
ミートソースがあまりにも美味しくて、口に入れるサイズを小さくして、ゆっくり味わった。
こんなにゆっくり食事したのは久々かもしれない。

食後のコーヒーを飲み終えてお会計へ。
あのイケメン店員が対応してくれた。
とても美味しかったです、と伝えると何度も見たあの爽やかな笑顔で返してきた。「僕、一度顔を覚えたら忘れないんですよ。また今度のご来店をお持ちしておりますね」
一度見たら顔を覚えるのか、すごいな。
これはまさに接客向きの人だ。
会計を済ませた後、イケメン店員さんから名刺を受け取った。
名刺に載っている顔写真も爽やかな笑顔だった。
「本日はご来店ありがとうございました。外は寒いのでお気をつけて」
ありがとうございます、と答えて扉を押そうとする私。
「こちらは引扉になっているんですよ」
そう言ってイケメン店員は扉を引き、自らの体の背中で扉を押さえて、私を外に案内してくれた。
そこまでしてくれるのか。
このお店、何から何までサービス精神旺盛だな。
素直に、また来店したいと思った。

料理が美味しいと食事が楽しい。
食事の会話が弾むと、料理も美味しく感じる。
おまけに店員さんがサービス精神旺盛だと、また食事したくなる。
日本一のミートソースと銘打っているお店。
ミートソースは言わずもがな絶品だった。
しかし、それ以上に日本一だったのはイケメン店員さんの接客だった。
日本一のミートソースと噂のお店は接客も日本一だった。



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