スキルベース組織とは相性が良いかもしれないメンバーシップ型人材マネジメント
米国のHRトレンドの情報を読んでいると、昨年あたりからスキル・ドリブン、スキル・ベースト・オーガニゼーションと言ったスキルを軸にした人材マネジメントの潮流が来ており、日本でもスキルベースの人材マネジメントに関するセミナーが増えてきました。
例えば、EY Japan の「スキルベース組織の未来」が分かりやすく解説してくれています。
この記事が解説する通り、「深刻な人手不足とスキルギャップの解消のために考案された」のがスキルベースの組織で、さらに「興味深いのは日本の人材マネジメントは伝統的に職能主義であり、職能とはスキルを重視することであり、先祖返りともいえる」と指摘しています。
少し前まで「ジョブ型人事への移行」が注目されていました。それがいま、迫りくる労働人口不足の時代を前にして、ジョブを単位としたポジションにタレント(人材)をマッチングしていくという従来の人材マネジメントの限界を見据え、ジョブをさらに分解したスキル単位でタスクとのマッチングを測る仕組みが必要になってくるというわけです。
先に参照した「スキルベース組織の未来」にはこの考え方を下記のようにわかりやすく図示化してくれています。
この図の右側のような人材マネジメントは実際、どのように行えばいいのでしょうか。その一つの方向は、多くの社員が社内兼業・副業型で働くということではないでしょうか。
一人の社員の所属組織はこれからは複数組織になるのが当たり前になる。そういう世界に突入した時、例えば、
・既存の評価システムは正しく個人の業績(パフォーマンス)を反映するためにどのような機能設定が必要になるのか
・労働時間管理の責任は誰が、どのように追うことができるのか
・人事異動の決定権は誰が持つのか
など制度やシステム面にも適応課題があります。
そのようなシステムや制度というハードウェアだけで対応できるかというと、実はそうでもない。社員の帰属意識がしっかりと会社に結びついていることがこのようなスキルとタスクをベースにした人材マネジメントが実践できる前提になると思うのです。
人的資本経営に関するバイブルにもなっている(と私は勝手に思っています)「人材版伊藤レポート2.0」は「会社と社員が互いに選び選ばれる関係を築く」という方向を示しています。
つまり、社員が会社を選択していることが基盤となっていることがこのような複雑なスキルベースの人材マネジメントを可能にするのではないか、ということです。社員が会社を選択するとは、社員が自分の会社に所属することを選んでいる、すなわちビロンギングがそこにはあるということだと考えます。
従来のメンバーシップ型の考えは、終身雇用を前提として、ややもすると「会社が社員に帰属意識を持つように強いている」かのような感覚があったかもしれません。
人的資本経営に取り組む企業がこれからの会社と社員の関係が互いに選び選ばれる関係へ進化することを意図して取り組んでいるならば、社員自らも選択的に、I belong to my company. の認識を持っているような、むしろ社員自ら主体的に会社に帰属することを選択している(=決めている)というメンバーシップの意識を高めることも重要です。
このようなメンバーシップの基盤なしに、ジョブ=1FTEという単位未満の細やかなタスクとスキルの複雑なマッチング・マネジメントを必要とするスキルベースの組織人材マネジメントに挑戦しても、それを安定的に実践していくことは難しい。
このように考えると、社員を起点にした新しいメンバーシップ感の醸成がとても大切になると思っています。
人的資本経営を通じて、社員と会社はコミュニケーションを重ね、
I love my company and that’s why I belong to my company.
という明確な社員起点のシン・メンバーシップ型へ進化とスキルベース組織人材マネジメントできる組織ケイパビリティを実装していくことが迫ってくる人材不足時代への備えとして重要になってくるように感じています。。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?