ヴォーカル・ディレクションが導く音楽体験の「涅槃」
こんにちはケンカイです。noteを書き始めて普通に楽しくなっているので更新頻度高いですが、あと数日で飽きるのが目に見えている気がします。書き溜めておいたらどこかの出版社からエッセイのリリースのオファーが来たりしないかな……まあでもケンカイヨシだと知名度的に全然弱いですね。
さて今日のテーマはluzくんに提供した「涅槃」です。
ケンカイは基本的に自宅で作詞作曲編曲を完了させ納品する仕事をしてますが、案件によっては現場でヴォーカル・ディレクションもします。音楽を普段作らない一般の方からしたら「ディレクションってどういう仕事なの?」って全然分からないと思うんですが、まあ簡単に言うと演技指導みたいなもので、「もっとこういう風に歌ってみたら?」みたいな提案をしつつ色んなヴォーカルテイクを録音していって、その中で良い部分を繋ぎ合わせたりします。「ここの歌詞は3番、ここは1番ですね……」みたいに話し合いながら。
自宅で歌を録音してアップしている歌い手の皆さんの場合、ディレクターが居ないのではなく『自分自身でディレクションしている』というのが正しい。まあだから極端な話ヴォーカル・ディレクターが存在しない現場でも作品自体は出来上がるのですが(実際、大メジャーのアーティストでも自宅で自分で録音してるよー。って人も今時そこそこいる)、自分がディレクションの仕事も担当させてもらう場合は、『歌い手本人も気付いていない歌声の魅力を引き出す』ことを意識しています。
luzくんとは、ぼくりりと同じく、元々仕事仲間というよりはたまに御飯食べたり音楽の話する御友達というニュアンスが強かった。で、「指先。」でジョインしたのをきっかけに、シングル「Rose」を全曲担当させてもらうに至ります。
このシングルは凄く好きな世界を表現できた仕事だったのですが、実を言うとヴォーカル面においては「luzくんの魅力をもっと引き出せたよな~」なんて思ったりしてました。これはluzくんが歌うときの最大の長所にして最大の欠点なのですが、声自身の気持ち良さに依存しがちというか、機械的に強めのビブラートをどの歌詞でも掛けちゃうことによって、歌詞の意味を声の良さが圧倒しちゃうところがありました。(これはluzくんに限らず、声が良い/歌が上手い歌い手さんが誰しも陥りがちの罠であります。自分の得意技を連打しすぎちゃう)
彼は本当にライヴ・パフォーマンスにおけるお客さんを自分の世界に引き込むファナティックな力が素晴らしく、その彼独特のアティチュードが反映されている楽曲が意外と少ないなーと思ったりしていました。「涅槃」はそんな気持ちから、それまでよりヴォーカル・ディレクションに力を入れた楽曲であります。
CHEMISTRYの案件をきっかけに知り合えた川口大輔さんという方がいて、彼はブラジル音楽について語れる数少ない友達&愛のある軽口を叩き合える兄貴分&音楽表現において大切なことを教えてくれる尊敬できる大先輩なのですが、彼に「アーティストの見てる景色からイマジネーションを膨らませて、それを声に反映していくようなディレクションをすると、曲の世界が一気に広がる」と教えてもらったことがあって、「涅槃」ではそれを試みてみました。
それまでのluzくんの曲とは違い、彼の得意なビブラートを完全に封印している箇所もあれば、逆に"めちゃくちゃ誇張する"箇所もあります。目的としていたのは歌詞のドラマと彼の歌癖をリンクさせることで、その歌詞の狂気的な世界を表現するために彼の得意技を配置するよう、なるべく丁寧に一音一音録音していった覚えがあります。
https://www.uta-net.com/song/309505/
俺に才能があったりイマジネーションがあるとかでは無く、第三者にしか見えない目線というのがあって、ヴォーカルを録音するときにディレクターを立てる、というのはそういうメリットがあります。自分だけだと視野が狭くなって気付かないところを「もう少しこういう風にしてみたら?」と誰かが言うことで、仕上がる音楽が一段、二段とクオリティが上がる。涅槃は自分がluzくんに提供した曲の中でも一番気に入っているもので、『音がカッコいいだけじゃなくて、ヴォーカリストの魅力を引き出すことを考えて音楽を作っていかないとあかんな……』と改めて痛感した案件であったのでございました。
余談ですが自分は特定の宗教団体に帰依しているわけではないのですが、ほんのりと神仏混淆(※超ざっくりいうと、神道と仏教の素敵な部分を良いとこどりしたような価値観)の宗教観を持っている人間です。なので、天津祝詞とか般若心経はその意味や響き、フロウともに好きで、こういう宗教をテーマにした曲をかけるのはとても楽しいですね。
クライアントの皆さん、宗教要素のある楽曲提供のオファー、引き続きお待ちしております(?) ~終~
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