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もりのなか

[マリー・ホール・エッツ/ぶん・え  まさきるりこ/やく  福音館書店]

この絵本には思い出があります。お話し会でこの本を読むことになったときのことです。茶色の表紙、モノトーンの絵、お話もなんだかピンとこなくて、有名な絵本だけれど私はそれほど好きな絵本ではありませんでした。けれど、お話し会の本選びは好きな本だけでは決められません。私は家に帰って下読みしました。

下読みをするときはいつも何度も黙読します。最初は文を追って。それから絵も見ながら。そして全体を通して黙読します。そうすると頭の中で本文が聴こえてくることがあります。その通りのイントネーションで、その通りに音を区切って、私は読むようにしていました。

文を繰り返し読んだあと、地味な絵をていねいに見ていると、動物たちがうれしそうな目をして歩いているのに気がつきました。ラッパを吹いている男の子は淡々と歩いているのですが、ライオンもゾウもクマも、みんななんだかとっても楽しそうです。

有名な絵本だから読んでおかなくちゃ、と思って読んだときには気がつきませんでした。絵とストーリーをざっと追って読んだ気になっていました。

お話し会の当日は晴れた日でした。数人の子どもたちに読んでいると、窓ぎわに座ってあっちを見ていた4才くらいの女の子が途中からじりっじりっと近づいてきたのです。

絵本を読むときはあまり感情移入しないように、淡々と読むことが求められます。でもその時、自分の読む低い声の響きの中にライオンやゾウやカンガルー、物言わぬウサギたちの楽しさがにじんでいるのがわかりました。そしてその静かな喜びが、聞いている女の子にも伝わっているのがわかったのです(み)





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