わらしべちょうじゃ
[さいごう たけひこ/ぶん さとう ちゅうりょう/え ポプラ社]
貧乏な男がたまたま手にしたわらしべ一本。わらしべはみかん三つに、そして反物三反に、さらに馬一匹へと変わっていき、やがて男はりっぱなやしきと広い田んぼを手に入れた。
この有名なお話の絵本はたくさんあります。 その中でもぴか一の、いや数ある昔話絵本の中でも心に残る一冊だと思います。 佐藤忠良のおおらかで品格ある明るい絵と、西郷竹彦の素朴でゆったりした文がテンポよく物語を紡ぎます。昔話を骨に、絵と文が見事に結合して一冊の絵本になりました。
よく知られているお話ですが、このたっぷりとした読後感はお話の結末とあいまって、しみじみと幸せな 気持ちにしてくれます。 二人の書き手によって他愛ない昔話が洗練された絵物語になった感じさえ受けます。(巻末の西郷竹彦の解説を読むとそれも納得できます) もちろん昔話とは時代の波に洗われてきたものですし、このお話は『今昔物語』にもある昔から愛されたてきたお話なのです。
読み終わったら本を開いて表紙を広げて見てください。この画家ならではの一枚の絵を楽しめます。
多くの図書館では昔話絵本はタイトル毎にまとめて置かれています。同じお話でも書き手によってどのように違うのか。ぜひ読み比べて頂きたいと思います。ただおすすめしたこの絵本は1968年初版で、手元の本は1993年の第33刷です。図書館でも書庫にしまわれているかもしれません。(み)