『アはアーケードのア』第7回 『ギャラガ』(1981年ナムコ)
『スペースインベーダー』→『ギャラクシアン』→『ギャラガ』へと至る名作リレー
『ギャラガ』は『ギャラクシアン』の続編にして、「ギャッ!」シリーズの方向性を確立した名作です。今回は『ギャラガ』をメインに、「ギャッ!」シリーズについて書いていきます。
『ギャラガ』を語るには、その前後のシリーズ作の話も欠かせません。まず『ギャラガ』の元となった『ギャラクシアン』は、『スペースインベーダー』の固定的な隊列の概念から脱却して、カーブを描き、急降下攻撃をかけてくる敵との戦いをメインにしたところが画期的でした。
『ギャラガ』はそこへ更に編隊飛行という概念を導入したところが新たな発明でした。もちろん、その他にも合体攻撃“デュアルファイター”や、敵が攻撃をしてこないチャレンジングステージ(これは『ラリーX』にもありましたが、仕組みとしてさらに進化している)なども素晴らしいアイデアでした。
画期的システム“デュアルファイター”
デュアルファイターはそこへ至る流れがきわめて特異でした。ボスにトラクタービームを撃たせる→ビームを浴びてファイターを捕虜に→次のファイターが出撃→捕虜を引き連れてボスが攻撃してくる→ボスを狙って撃墜→捕虜と合体、そしてデュアルファイターに。何という面倒臭いパワーアップシステム。
こんなにもパワーアップまでの工程が長く、しかも誤ってファイターを撃てば一機失うというリスクがあり、さらにパワーアップ後には自機の横幅が2倍になるという使いこなしの難しさ。単に込み入ってるというだけではない。よくぞこんな特異な仕組みを採用したと思います。
でも、不思議なことにこれでしっかりゲームバランスが取れているのだから驚きます。個人的にぼくはシリーズの中でも『ギャラガ』がとくに好きでずいぶんやり込みましたが、常にデュアルファイターで遊んでいました。このゲームが上手な人の多くはその状態でプレイしていたのではないかと思います。
『ギャラガ』を名作たらしめた最大のアイデア“編隊飛行”
その上でぼくが『ギャラガ』で一番優れているのは、前述の編隊という概念にあったと考えています。敵が編隊飛行で登場するオープニングモード→軍団整列後に始まる通常モード→敵の残数が減ってきてからの波状攻撃モードと、短い1ステージの中で敵の戦法が猫の目のように変移していくおもしろさ。
通常モードと波状攻撃モードは、前作の『ギャラクシアン』にもあったので、このゲームではそこに、このスピード感あふれるオープニングモードを追加したということになります。『ギャラガ』の完成度の高さは当時のシューティングゲームの中でも白眉といえるものだったと思います。
先のデュアルファイターシステムにしても、オープニングで二列縦隊の敵にツインショットを撃ち込んでいくところがとくに気持ちいい。編隊飛行とデュアルファイターは、大変相性のよい2つの要素だったといえます。
これらは、今では大した話には聞こえないかもしれません。この後さまざまな込み入ったシューティングが生み出されたので、『ギャラガ』は非常にプリミティブなゲームに見えると思います。ですが、当時『ギャラクシアン』をベースにここまで持っていったというのはすごいことだと思うのです。
さまざまな「ギャッ!」シリーズ
続く続編の『ギャプラス』では、さらなるスピード感、ブラスターヘッドによる多彩なパワーアップ、お手玉遊びのチャレンジングステージ、スペシャルフラッグなどの隠し要素があり話題を呼びましたが、個人的には新たに導入された「援軍」システムが大変重要な役割を果たしていたと思います。
『ギャラガ』では、編隊はオープニングで飛んできて整列してそこで終わりです。が、『ギャプラス』では軍団が整列していったん通常モードが始まった後も、援軍編隊が飛来してきます。この仕組みによって『ギャプラス』は『ギャラガ』以上に複雑なステージ構成、展開が可能になりました。
『ギャプラス』はつくりがマニアックすぎて個人的に苦手だったのですが、自分がナムコに入社して『コズモギャング・ザ・ビデオ』を開発することになったとき、研究のため延々プレイした末に何とかあの作品特有の“めまい感”のおもしろさがわかってきて“こういう遊びなんだ”と理解できたことをよく覚えています。
『コズモギャング・ザ・ビデオ』開発時に、シリーズ作はすべて調べ直してノウハウを活かそうとしたのですが、中でも援軍は一番ありがたい仕組みでした。敵飛行曲線のバリエーションと組み合わせて、ほとんどのステージでこの仕組みを使いましたが、おかげでかなり多彩な展開を作ることができました。
『ギャラガ'88』ではステージ分岐、スクロールステージ、ボス戦、障害物の概念、継続プレイ、3機合体のトリプルファイターなどの新規フィーチャーが導入されました。トリプルは強すぎてゲームが大味になってしまうという難点はあったのですが、それで強引に押していく爽快感がありました。
個人的に『ギャラガ'88』も好きで、難易度が低かったのでひまさえあれば1コインクリアしていた覚えがあります。タンゴやワルツなどの曲に合わせて敵が動くチャレンジングステージは出色の出来だったと思います。あれは曲ありきで企画のかたが曲に合わせてチマチマと敵の動きをつくったそうです。
「ギャッ!」シリーズには他にもいくつかあるのですが、今回は割愛します。『ギャラガレギオンズ』なども大好きです。こうした基本的に一画面内で完結する仕組みのアクションゲームには独特の美しさがあって、とくに出来のよいものはじつにほれぼれします。 了