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年金部会で配布した『女性セブン』の「いますぐ厚生年金に入りなさい」
勿凝学問437
適用拡大直前の年金部会での提出資料
2024年10月1日の被用者保険の適用拡大施行日の直近9月20日に、社会保障審議会年金部会が開催された。その日、次を資料を配付している。
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当日の議事録より
当日の年金部会では、次のように話していた。
○権丈委員 今、労働市場でいろいろと興味深いことが起こっていて、最低賃金の世界では目安50円よりも9円上げて59円とした県が公労使の全会一致で採決されたり、目安よりも34円も上げた県で使用者側の賛成者がいるかと思えば、一方で労働者側の反対者もいたりする。今までは考えられないようなことが起こってきているわけです。
何が起こっているのかというと、労働市場が緩んでいた、弛緩していた状態から、逼迫した状態に転換してきたことが大きいと考えています。
我々の用語で言えば、無制限労働供給を意味する水平的な労働供給曲線が反時計周りに回転し始めて、労働力が希少な社会に入ってきた。これは企業、特に中小企業が生き残る戦略を180度転換させます。例えば、無制限労働供給の時代には、企業へのコンサルというのは社会保険料を払わなくても済む方法とか、法律に抵触しないで賃金を下げる方法をアドバイスするのが顧客が生き残るための有益なアドバイスになり得ました。
ところが、フェーズが変わって労働力希少社会に入ると、そうしたアドバイスをすればその顧客は数か月後には人手不足倒産しているかもしれない。顧客である企業が生き残るためには、労働者に魅力のある職場のつくり方とか、被用者保険の適用は労働条件のミニマムですよと、少々厳しいことを言うことのほうが、本当は企業に優しい有益なアドバイスだということになる。
だから、東京都の最低賃金もそうなのですが、東商とか日商とか中央会というところは関連企業から適用拡大に反対するようにとか、最賃を上げないようにと言われてくるわけですけれども、そういう政府への要望が通って、そこでできたルールを真に受けていたら、企業は人手不足倒産して、そこでの労働力はより生産的に活用してくれる経営者のところに移動します。そういうことが労働力希少社会では普通になる。
アダム・スミスはこうした市場の力を高く評価していたわけで、私もこの点は市場はすばらしいと思っています。
今日は、『女性セブン』の「いますぐ厚生年金に入りなさい」という特集の記事を配付させてもらっていて、少々愛嬌のある勇み足ぎみのことが書かれている記事なのですけれども、ここに書かれていることがいかに世の中に広く理解されるかということが、適用拡大がなされる来月10月1日を前にして重要だと思っています。
この記事の最後のほうに、適用拡大が進んでも時間がかかるだろうから、既に被用者保険に入ることができる会社に転職したらいいと私は話していて、労働市場が弛緩していた、緩んでいたかつてでは言っても意味がなかったけれども、今は意味があります。
それで、大手全国の6紙の新聞とNHKニュースを対象として「年金」と「年収の壁」というキーワードで検索をかけますと、2021年にはヒット数がゼロです。それで、2022年に野村総研が出した働き損レポートをきっかけとして報道合戦が始まってブームが起こるわけですね。そして、2016年の適用拡大時よりも2022年の適用拡大時のときのほうが3号で就業調整した人の割合は高かったという報告もありますけれども、その原因として2022年後半から年収の壁、働き損という報道が盛り上がっていたことが一つ考えられます。
昔からこうした現象を私は「予言の自己実現」と呼んでいるのですけれども、今回はそうした喜劇、悲劇を避けたく思って今日は『女性セブン』の記事を資料として提出させてもらいました。
ちなみに、『女性セブン』は9月号では今度、「女の年金は2歳繰下げをしなさい」という特集を組んでいました。
・・・続きは、年金部会での発言録|kenjo
次の配布は遠慮した(笑)
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おまけ――女性セブン「年金減額地獄が始まった」5月2日号
「いますぐ厚生年金に入りなさい」の2ヶ月前は「年金減額地獄がはじまった」。研究室までやってきてくれたインタビュアーに話していたことは、次――下記の特集のなかに収まってます。
インタビュアーとの原稿
「マクロ経済スライド」という仕組みがある。社会保障制度に詳しい、慶應義塾大学商学部教授の権丈善一さんが説明する。
「ちびまる子ちゃんの家族を考えてみましょうか。世の中で物価や賃金が等しく3パーセント上がったとします。その時、友蔵の年金が3パーセント上がったら、それは実質価値が保障されていると言います。しかし日本の年金では、友蔵の年金は2.6パーセントしか上がりません。その差額0.4ポイント分が、実質価値の減額という意味です。その0.4ポイント分はまるちゃんの将来の年金に友蔵から仕送りされ、まるちゃんが受け取る年金が増えることになります。それが’04年に導入された『マクロ経済スライド』です。難しいかもしれないけど、この、孫、曾孫への仕送りの仕組みで、日本の年金が、まるちゃんやその先の世代の人たちが年をとっても、生活の柱になる給付水準を保障することができるようになりました。」(権丈さん)
岸田首相は自民党政調会長だった’18年、企業で働く人全員が社会保険に加入する「勤労者皆保険」を提唱した。来る財政検証ではそれを実現すべく、厚生年金の適用拡大に伴う試算が出ると、権丈さんはみる。
「公的年金は亡くなるまで保障される保険です。自分がいつ死ぬか、これは本当にわかりません。50歳の頃に病弱だった人が長生きしたり、その逆もあったりもするのが世の中です。そこに、亡くなるまで給付を約束してくれる公的年金という保険があるのはとても助かります。私も若いときは、それなりに年金保険料なんか払いたくないと思っていましたが(笑)、今は払っておいて良かったとしみじみ思います。
公的年金は、国庫負担という補助金が入っているし、保険料そのものは、『労使折半』と言って半分を企業が払ってくれます。「年収の壁」という話が流行っていますけど、よほどの家庭の事情がない限り就業調整なんかしないほうがいいです。
東京都の「くらし方会議」というところが、就業調整をして3号として生きていった場合と継続して就業していった場合の生涯所得を計算しています。約2億円違うようです。その2億円のうち、年金で3千万円の差が出ます。もちろん、この差は長生きすれば大きくなります。「年収の壁」を超えたら働き損になると言う人たちもいますが、あの話は大ウソです。
ついでに言うと、厚生年金には離婚分割というルールがあり、配偶者が3号だった夫婦が離婚するときには、問答無用で、年金は完全に半分に分割されます。3号制度はお得だと思い、奥さんに3号でいるように薦めたことのある男性はけっこういるようなのですが、かまきりの雌が頭を雌に食べてもらって喜んでいるようなものですね。
この国では、ふたりで厚生年金を持っていれば、老後はかなり安定したライフプランを立てることができます。できるだけ多くの人たちが厚生年金に入ることができるようにする。それが、政府の言う勤労者皆保険です」(権丈さん)。
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