賃金と指定労働時間のセットで提示される就労条件
次は、1981年に大学に入学した年の「経済学」の授業で使われていた教科書、西川俊作先生著の『経済学』の一文である。
今の時代、ほとんどの場合、この文章にある「雇われ労働」である。雇われの身の雇用者は雇う側の雇用主によって提示される「賃金と指定労働時間のセット」の就業条件を受諾するか否かを決定する。普通に見られる、当たり前の光景である。次のような状況をみてみよう。
次はどうだろうか。
次の図は、2007年に出した『再分配政策の政治経済学Ⅳ』からの引用になるが、日本の社会保険制度の下では、雇用主は、次の図に描いているような屈折点を持つ労務コスト線に直面している。
これら図表2、図表3を(図表1はありません)、『もっと気になる社会保障』からの文章により説明してみよう。冒頭に「次の図」とあるのは、上のふたつの図である。
見えない壁
厚生年金適用除外の規定が非正規雇用を生む誘因となっている話は15年以上前から言っていた。経営者側が意識する壁には、みんなには関心がなかったのか、理解できなかったのか、おそらく後者だろうが、この話が、新聞の記事としてはじめて取り上げられたのが昨日2023年10月21日であった。
こうした「社会保障そのものが非正規雇用を促し格差・貧困の原因となっている」という、私が、日本の社会保険制度が抱える最大の問題と考えてきた課題を解決する方法は、既に2007年に出した本で論じていたように、「企業が直面する労務コスト線から屈折点をなくす」ことである。
勤労者皆保険という理念と具体的な姿としての厚生年金ハーフ
次は、『もっと気になる社会保障』(2022)に書いていることである。
2018年の段階では、「勤労者皆社会保険」と仮に呼ばれていたものは、今は、「勤労者皆保険」と呼ばれている。「企業が事業主負担を回避するために生じる「見えない壁」を壊し」――勤労者皆保険のこの理念の実現を応援している。その具体的な制度の姿が、所得の低い勤労者の保険料は免除・軽減しつつも事業主負担は維持する厚生年金ハーフである。
厚生年金ハーフとドイツのミニジョブ
次は、第7回年金部会(9月21日)に年金局より提出された資料(資料2、36頁)にある、ドイツのミニジョブの紹介である。
この日の私の発言。
第3号被保険者制度と女性の就労の制約と指摘される諸制度について
この日の年金部会の議題は、「第3号被保険者制度と女性の就労の制約と指摘される諸制度」についてであった。当日の発言の全文は次になる。
誤った年金情報を信じ込まされて集団催眠に陥っていた日本
10月に入ると「第14回全世代型社会保障構築会議」(10月4日)が開かれた。その日の発言の一部として、次のような年金の話をしている。
関連するノート
・勤労者皆保険と従来の適用拡大論議の距離|kenjoh (note.com)
・「第三号被保険者がお得」は大きな誤解 ~いわゆる年収の壁問題の本質を探る~|マネーリテラシー総研 (note.com)
・年収の壁、第3号、適用拡大、そして勤労者皆保険|髙橋義憲(ファイナンシャルプランナー) (note.com)