『Teaser and the Firecat』★★★★★(4.8)-音楽購入履歴#20
Title: Teaser and the Firecat(1971)
Artist: Cat Stevens
Day: 2024/7/27
Shop: Kyoto Engels Girl
Rating:★★★★★(4.8)
京都エンゲルスガール
7月27日。
「今日は何を買って帰ろうかな」
とワクワクしてディグっていたのは京都エンゲルスガールというレコード屋。
サポートしている「真舟とわ」のワンマンライブが京都エンゲルスガールであり、その観客&手伝いみたいな感じで訪れた。
前回来た時は去年の年末とかで、その時も真舟とわのバックとしてだったが、その時にメリーホプキンの1stを買って帰ってから「ここに来たら一枚レコード買って帰る」というルールを勝手に自分に設けていた。
前回メリーホプキンと悩んだのがジョンサイモンの1stだったから、元々はそれを持って帰るつもりだったんだけど気づいたらキャットスティーブンスを手にして家に帰っていた。
京都エンゲルスガールは数は少ないが素晴らしいレコードが揃っていて、一枚一枚に店主のゲシさんによるコメントが書いてあったり、音楽愛に溢れるレコード屋なので京都を訪れた際は是非訪れてみてください。
英国SSW
60's、70'sにハマってからもう20年弱経つわけだけど、それでも抜けている部分は山ほどあって。
その内の一つが英国SSW界隈だったりする。
70年付近にアメリカではSSWブームが巻き起こって、それはイギリスでも同様で。
なのにイギリスSSW勢には何故かハマるタイミングがなくて、それは正直「掴みどころがない」というか「把握しづらい」とか「分類しがたい」みたいなところがある。
SSWってのは基本的にはやっぱりアコースティックギター、もしくはピアノを弾いて歌うスタイルが通常で、そのためどうしてもフォーク味みたいなものは含まれている。
70年付近に出てきたアメリカのSSWはやっぱりフォークとカントリー、ブルース、60'sのアシッドの残り香、みたいなものが共通してあって、僕の頭にすんなりと収まっていて。
ところがイギリスのSSWとなると途端によくわからなくなる。
イギリスのフォークはやっぱりトラッドで、その系譜のSSWはヴァシュティバニヤンだったりサンディデニーだったり、関連性でいうとイアンマシューズだったり、その辺はすんなり収まっている。
ニックドレイクだったりサイモンフィンだったりのアシッドフォークSSW勢もサイケの延長としてすんなり収まっている。
ポップ路線に特化したSSWは逆にそれはそれですんなり受け入れられる。エルトンジョンだったりギルバートオサリバンだったり。
それらの中間というか、なんとも言い表わせないところにいるのがキャットスティーブンスだったりアルスチュワートだったりで、その辺のSSWにいまいち手を出せない時期が最近まで続いていて。
アコースティックギターを持ったフォークスタイルでありながら、非トラッドで、ポップ味もあるがそこまで振り切ってもない。
多分アラン・ハルなんかもその一群に含まれているんだろうけど、リンディスファーンやストローブスにハマってからその辺の壁が徐々に崩れていって、ここ数年キャットスティーブンスを気に入ってサブスクで聴いていた次第で。
やっぱりブリティッシュフォークにがっつりハマったのが大きな要因で、「英フォークはトラッド!」っていうので頭が硬くなっていたんだろうな。
だからリンディスファーンやストローブスやマグナカルタといった非トラッドフォークロックにハマるのも遅かったし、英国SSW勢の魅力に気づくのもこんなに遅くなってしまった。
まぁ全ては頭の硬さのせいでございます。
キャット・スティーブンス
なんのタイミングでキャットスティーブンスの良さに気づいたのかは忘れてしまったけど、本当にここ数年なのは確か。
70年3rdから今回買った71年5th『Teaser and the Firecat』までをとにかくサブスクで聴いていて、キャットスティーブンスのキャッチーで可愛いのに独特なメロディ回しとセンス溢れるリズム感覚の虜になった。
キャットスティーブンスは慈善活動家として知られているようで。
Wikiの説明にも
とある。
調べてみると75年に海で溺れて死にかけたことをきっかけに、イスラム教へ改宗し、ユスフ・イスラムと名乗り、音楽界から姿を消したとか。
イスラムは歌と楽器が微妙なところらしく、ならやめよう、とやめたとか。
慈善家として色々受賞してるようで、9.11の時とかも表舞台に出て発言してるとか。
過激なイスラム原理主義のテロ等でイスラム教徒全体が悪く思われていることとかに対する活動?とか。とにかく平和を望むイスラム教徒としての活動みたいなものだろうか。
現在のイスラエル・パレスチナ戦争とかもまさに真っ只中にキャットスティーブンスはいるんだろうか。
デビューは66年で67年にデラムレコードから2枚のアルバムを出している。
この時期はそこまでヒットしなかったけど、キャットスティーブンスの曲をトレメローズがヒットさせたり、P.P.アーノルドがヒットさせたり、ソングライターとして頭角を表した時期みたい。
この初期の音楽性はバロックポップ的なソフトロック/フォークロックスタイルで、同時期にデラムからリリースされたデヴィッドボウイ1stの音楽性とかなりダブる。
で、60年代末に結核を患い、療養中に瞑想したりして精神世界が開花して、僕が虜にされた70年代前半に突入するみたい。
病気とか事故とかでステージが変わっていった人なんですね。
Teaser and the Firecat
そんな黄金期の70年代前半の一枚71年5th『Teaser and the Firecat』を今回手に入れたんですけど、めちゃくちゃ良い。キャットスティーブンスの魅力が詰まりまくっている。
サブスクで聴いてたから知ってはいたんだけど、手にするとその魅力が倍増。
1番思うのは独特のリズムセンスですね。
メロディ自体に独特のリズムがあって、だから特殊なリズム運びでも全く不自然じゃないアレンジになる。
「ビートは歌自体に既に存在してる」ってのはこの頃つくづく思うんだけど、それを痛感させられますね。
ビート決めて、コード決めて、そこに歌を乗せる作り方では絶対に生まれない曲たち。
まぁ天才というしかないソングライターでございます。
こういうリズムセンスはシドバレットとかティラノサウルスレックス時代のマークボランとかと通ずるところがあるかと。
あとメルヘンさとドリーミーさもある。これはドノヴァン的。
このアルバムと同タイトルの児童書も72年に書いて出版してるらしく、物語的なコンセプトを持ったアルバムであるよう。アルバムジャケットのハットを被った少年が〝Teaser〟、横にいる猫が〝Fire Cat〟ということみたい。
プロデュースはヤードバーズのオリジナルベーシストとして知られるポール・サミュエル・スミス。70年代アイランドレコード期のキャットスティーブンスを支えた男。
まぁ、言っても英チャート2位、米ビルボード2位、豪では15週1位を記録した大ヒットアルバムなので、僕が語るまでもないんですけども。
A-1.The Wind
ドノヴァン的なメルヘンでドリーミーな世界観を持ったキャットスティーブンスの代表曲の一つ。
可愛いギターも優しい歌も「ねばねばねば」の歌い回しも、全てが最高な一曲。
A-2.Rubylove
リズムセンス爆発してる名曲。
ギリシャの弦楽器ブズーキが特徴的に使われている。
アルバム通して基本的にキャットスティーブンスによる弾き語りだけど、ここぞという時にブズーキだったりピアノだったりオルガンだったりバンドだったりが効果的に使われてる。
ストリングスはラスト曲のみ登場するが、全体的にシンフォニックは空気も持っているのも特徴的。この曲では間奏のコーラスワークがシンフォニックさを演出している。すごい。
キャットスティーブンスにはなんとなくLove(米バンドの)も感じる。
A-3.If I Laugh
これも基本弾き語りだけど間奏がシンフォニック。コード運びとか美しすぎる。
ほんでキャットスティーブンスはギターも上手いし面白い。
めっちゃ美しい曲やけど、何回聴いても「If I Laugh」って歌ってるように聞こえん。「シガレット」とかに聞こえる。
A-4.Changes IV
これはもはや1人レッドツェッペリン。
スネアの連打とギターカッティングで思い出すのはジミヘンドリックスの〝マシンガン〟。
『レッドツェッペリンⅣ』がリリースされるのはこのアルバムの1月後だから関係ないか(そもそもⅣは通称か)、とか、70年ジミヘン『バンドオブジプシーズ』でマシンガンの次の曲は〝Changes〟だな、とか、タイトルについて推測したくなったり。
ジミヘンとは60年代末に交流があったようだし、もしかしたら…
A-5.How Can I Tell You
A面ラスト。
弾き語りスタイルの美しい曲。
間奏でストリングオルガンにハープシコードが絡む瞬間は至高。
終盤に少し登場する女性のスキャットはリンダ・ルイスであるらしい。
B-1.Tuesday's Dead
マリンバやパーカッションが光るリズミカルな曲。
アラン・デイヴィスというセッションギタリストが70年代通してキャットスティーブンスをサポートしてるが、彼はニッキーホプキンスのSweet Thursdayのメンバーだったらしい。
B-3.Morning Has Broken
この曲はシングルリリースされて英米でヒットしてる。
アルバム唯一の非オリジナル曲。
原曲はキリスト教讃美歌。この頃はまだキリスト教だったのね。
素晴らしすぎるピアノを弾いてるのはリックウェイクマン。後の73年リックウェイクマン『ヘンリー8世の6人の妻』に収録される〝Catherine Howard〟のピアノフレーズを聴いたキャットスティーブンスが、それと似たようなものをこの曲で弾いてくれと懇願したとか。確かにとても似ている。
『ヘンリー8世』がこんなところで繋がってくるとは思わず、とりあえず2枚のレコードは並べて保管しておくことにする。
B-4.Moonshadow
やっぱめっちゃドノヴァン味。好き。
これもシングルリリースされた曲。
B-5.Peace Train
ヒッピー味溢れる反戦ソング。
ストリングスが美しい。
やっぱアルバム通してだけどシンフォニックなコーラスが独特。
この当時はもちろんベトナム戦争に対して歌われた曲なんだけど、後々、特にキャットがイスラム教に改宗してから色々言われたりもしてるみたい。
「彼がイスラム教徒かどうかはこの曲の素晴らしさとは関係ない」という意見ももちろん溢れてるけど。
これもシングル曲で、B面にシングル曲が固まってる形になっている。
次は4th『Tea for the Tillerman』を買う‼︎
いやほんまに最高やなキャットスティーブンス。
次はこの一つ前のアルバム70年4th『Tea for the Tillerman』をぜひ買いたい。同じような童話みたいなジャケットなので、2枚揃えたいのよねん。
4thもサブスクで結構聴いてて良い曲だらけの名盤なんだけど、ただ1曲〝Wild World〟だけがどうしてもMr.BIGがちらついちゃうのよね。
Mr.Bigで知った曲で、というかキャットの曲だなんて当時は知る由もなかったので、染み付きすぎてるというか。
Mr.Bigが悪いわけじゃないんだけど、キャットの世界観とどうしても合致しなさすぎて…
まぁでも4th買います!笑
今年買った20枚目はキャットスティーブンスでござんした。
最近全然レコード屋行けてないので近々また行きたいざんす。
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