フィーダーの虐待兄を許さない
私には一人の兄がいた。いや、今も存在しているが、私の中ではすでに兄ではない。彼が私にしたことを考えると、家族としての情などとうの昔に消え去っている。
兄は「フィーダー」だった。フィーダーとは、相手に過剰な食事を与え続け、太らせることに執着する者のことを指す。世間ではフェティシズムの一種と捉えられることもあるが、私にとってそれは単なる嗜好などではなく、立派な虐待だった。
兄は私が物心つく頃から、異常なほどに食べ物を与え続けた。幼い私はそれを愛情と勘違いし、兄の差し出すお菓子やジャンクフードを受け取っていた。しかし、それは単なる甘やかしではなく、兄の歪んだ支配欲の表れだった。食事の量が増えていくにつれ、私はどんどん太っていった。健康診断では異常値を示し、学校ではいじめの対象にもなった。それでも兄はやめなかった。むしろ私が太ることに喜びを感じていたようだった。
私は何度も「もう食べたくない」と訴えたが、兄は笑いながら「大丈夫、お前はもっと食べられるよ」と言って無理に食事を押し付けた。断れば怒鳴られ、時には罰として食事を抜かれることもあった。その異常な環境の中で、私は食べることに対する恐怖を覚えながらも、食事を拒むことのできない身体になっていった。
やがて私は高校に進学する頃には肥満体型となり、健康状態も悪化していた。周囲の視線が痛く、自己嫌悪に苛まれた。だが、家族は兄の異常さに気づかず、むしろ「兄弟仲が良い」と勘違いしていた。母は「お兄ちゃんが食べさせてくれるなんて優しいね」とすら言っていた。誰も私の苦しみを理解してくれなかった。
高校卒業と同時に家を出て、一人暮らしを始めたことで、ようやく兄の支配から逃れることができた。しかし、その影響は消えない。過食症と拒食症を繰り返し、ダイエットをしても自己肯定感は低いまま。普通の食事を楽しめなくなったのは、兄のせいだ。
家族の集まりには呼ばれるが、私は絶対に参加しない。兄の顔を見るだけで、過去の記憶がフラッシュバックする。母からは「そろそろ許してあげなさい」と言われるが、私は許さない。兄が自分のしたことを深く反省し、私に謝罪することはないと分かっているからだ。
私は兄を許さない。彼がしたことは、私の人生に深い傷を残した。たとえ家族であっても、許せないものは許せないのだ。