足らぬ足らぬは工夫が足らぬ
私は以前、零細企業でITエンジニアとして働いていた。従業員数は10人程度、業績も決して芳しくない。そんな環境で、日々上司や社長からの愚痴を聞かされていたのだ。「売上が足りない」「お客さんの要求が多すぎる」「人手が足りない」——とにかく何もかもが「足りない」と言われ続けた。まるでそれがすべての問題の根源であるかのようだった。
ある日、社長が特に強い口調で「足らん、足らん!すべてが足らん!」と机を叩きながら言った瞬間、私の中で何かが弾けた。「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」と心の中でつぶやいていた。確かに、物資や人手が不足しているのは事実だ。しかし、だからといって何も変えられないままでいるのは違う。足りない中でどうやって最大限の成果を出すか、それが本当の仕事ではないのか?足りないものを嘆くよりも、いかに工夫して打開策を見つけるかが大事だという思いが強くなった。
そこで私は、時間の合間を縫って、効率化のための小さなツールをPythonで自作したり、タスク管理の見直しを提案したりした。簡単なことだが、これだけで作業のスピードが改善し、チームの士気もわずかながら向上した。もちろん、すべての問題が解決したわけではないし、社長の愚痴がなくなることもなかった。しかし、「足りない」現実に対して工夫して取り組むことが、少しずつではあるが、前進の一歩になると感じたのだ。
その後も私は「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」を胸に、常に改善策を模索し続けた。