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電験三種、とは
昔、電験三種(第三種電気主任技術者)という国家資格の勉強をしたことがある。きっかけは単純で、「ビルメンテナンスの職員になれば安定して働けるかもしれない」という漠然とした考えだった。当時は特に目立った野望があったわけでもなく、資格を取ることの意味について深く考えることもなかった。ただ、「この資格があればビルメン業界で有利になるらしい」という話をどこかで耳にした程度の動機だった。
電験三種は決して簡単な試験ではなく、理論、電力、機械、法規の4科目を突破する必要がある。私は理系の基礎知識はあったのだが、試験範囲の広さに圧倒されながらも、参考書を開いては夜な夜な公式を覚えたり、問題を解いたりした。特に「電力」や「機械」の分野では、難解な電気回路や発電所の仕組みに苦戦し、途中で何度も心が折れそうになった。正直なところ、試験に合格すること自体が自分の人生にどう役立つのかもわからないまま、ただ勉強を続けていた。
結局、試験に合格することはできなかった。中途半端な動機や覚悟では、難関資格を突破するのは無理だったのだろう。それでも、あの時の経験は今でもどこか心に残っている。何かを学ぶ過程で得られる達成感や挫折感は、それがどんな形であれ自分を成長させるきっかけになるのだと思う。
今振り返ると、あの時の自分は何かを変えたかったのかもしれない。ただ、方向性を見失っていただけなのだろう。資格取得の意味や目標をもっと明確にできていたら、結果は違っていたのかもしれない。