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#小説
プログラミング小説:第15章「入院生活の苦痛さ」
↑前回
目が覚めると、真っ白い部屋だった。
身体を動かそうとしたが、ピクリとするだけで無反応だ。
しかし少しずつ慣らしていけば動きそうなので焦らず四肢を動かしてみた。全身が鉛のように重い。
全てがわかった。私は死ぬのに失敗した。
しかし何故あんなことをしてしまったのだろう。会社に行きたくないから薬を一気飲みしてあの世に行こうとしたようなものか?
たとえ会社選びに失敗して再就
プログラミング小説:第14章「今生の別と報われなさ」
↑最初
↑前回
入社してから3日目の早朝、私は起きて家の周りを散歩した。
歩いている最中も、いい大人ながら涙が止まらなかった。今回の仕事を辞めれば、経歴に傷がつくだけでなく、無職期間もかなり長くなるだろう。そして何よりもう、絶対にプログラミングは出来ない。そう信じ込んでいた。
数十社応募してようやく引けたのがあんな劣悪なSES企業であり、そこを辞めても地獄、辞めなくても地獄。貯金
プログラミング小説:第13章「SESの片棒を担ぐことの重さ」
↑前回
「もういいよ、お前みたいなおっさんいらないから」
初日の作業日、客の声で賑やかに振舞うバックヤードにて、現場の担当者なのか責任者なのかわからない20代後半程の頭を茶色に染めた神経質そうな男に言われたのは、この言葉だった。
そもそもどのような業務配置構造になっているのか、そして指揮系統はどうなっているのか、とんと見当がつかない。と言うより、これは入社日に気付くべきだったのだが、何故
プログラミング小説:第12章「さよならとはにかみさ」
↑前回
「そうか、あと2ヶ月か。寂しくなるけど長い間お世話になったね」
そう労ってくれた水上隊長に、こちらこそ、と返すと、退職の手続きは、私の方で書類を書きさえすれば、あとは全部やってくれる、とも。円満でありがたい話だ。
「えー、柚木さん、辞めちゃうんですか。それは残念です」
数ヶ月前から辞めたいやら転職したいやらと言っていた五十嵐さんも、私の退職を残念がってくれた。他の隊員の方々も同様
プログラミング小説:第11章「初めての面接と不慣れさ」
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年も明けてすぐに
【明けましておめでとう! 今年もよろしくお願いします!】
という、桑谷さんからのチャットが届いて、それっきり私のスマホは鳴らない。
とは言え、大事な友達からきたメッセージなので、それだけで十分満足である。
私は暮れ正月もプログラミングに熱中すると決めているので、遊びやお屠蘇で気を晴れやかにする機会などない。ただひたすら、目の前のコードを操作するのみだ。
プログラミング小説:第10章「年月の経過と寂しさ」
↑前回
總星学園の文化祭が過ぎ、私たち警備員のやることも変わらない日々が続き、年末に差し掛かった頃。
またもや転職エージェントからメールにて連絡が来て、転職活動の様子はどうかと聞いてきた。今度こそ私は、一生懸命時間をかけて作った公開済みのPHPでの自作ブログアプリをメールの本文に添付して送った。すると転職エージェントの小野は「このサイトWordPressで作りました?」などと、まるで嘲笑す
プログラミング小説:第9章「死の先を思う痛感さ」
↑前回
秋風が舞い散る代わりに残暑の生暖かさを全身で感じていた10月1日の私は、東京都内の某所にある墓場の前にいた。
【大倉 沙織】
何年ぶりだろう。墓跡の中の彼女の前に立つのは。あの日から13年。私は何も変わっていなかった。目の前に奉られている元恋人が永遠に歳を取らないように。
そして先に一方的に約束を交わし、先に一方的に約束を破ったのは、他ならぬ彼女であった。
(生きよう)
プログラミング小説:第8章「再会の安心さ」
↑前回
さて、何から手をつけていこうか。
9月2日の朝5時。台風一過とはよく言ったもので、外はこんな時間からもうよく晴れていて少し蒸し暑いほどだ。
まず、顔を洗い、朝食をとり、もう一度シャワーを浴びて、歯を磨く。それから昨日一日ほとんど通知を無視していたスマホを見ることから始めた。
通知は6件あったが、1件は桑谷さんから昨日の16:51に電話の不在着信、もう5件はチャットアプリから
プログラミング小説:第7章「再発と自責の無残さ」
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本当に風と雨の強い日である。
今日の私の役割は、こんな日に学校へ登校しようとする子供たちに
「今日は休校日ですよ」
と、伝えることだった。レインコートを着て校門の前に立って。
休校日であるという事を伝えるなら、学校側と生徒たちそれぞれの連絡手段があるだろうに。私の子供の頃はそれが電話での連絡網だったが、今は携帯一つでなんでも出来てしまう時代なのだから。
それ
プログラミング小説:第6章:「力なきものの卑屈さ」
↑前回
Pythonの学習自体は楽しいが、ネットで検索すると、これを覚えたからと言って未経験から簡単に就職できるわけではないことに気がついた8月ももうすぐ終わりの頃。
總星学園に通常授業の夏休みはあっても、我々警備員には特別休暇のようなものは与えられない。しかし、逆に言えばこれまでと変わらずメリハリをつけて、仕事と家でのプログラミング学習にあてられている、と言える。
勤務中は、主に
プログラミング小説:第5章「勉学と励ましの尊さ」
↑前回
生憎の曇り空となり、7月ながら少しばかり肌寒い日曜日となった、桑谷葵さんと出会う日。
彼女が指定したコワーキングスペースに一緒に行くために、私は待ち合わせ場所の池袋駅の西口前へと向かった。
約束の10時の15分前に着けば間に合うだろうと思ったら、彼女は既に来ていた。白のフリルのついたワンピースを着ていて、イヤリングをしていた。
私が近づくと、彼女はこちらを確認し、お得意の笑