デザインとプロダクトマネジメントに共通する「体験設計」の身につけ方を考えてみる
"Software is eating the world"
著名投資家マーク・アンドレーセンが発表してから約10年。身の回りにはアプリやWebサービスが溢れ、多くのことがデジタルで済む時代になってきました。
最近では「DX (デジタルトランスフォーメーション) 」という言葉も出てきて、より一層デジタル化への流れが強まっているように感じます。
このnoteでは、自分自身がデザインをテーマにサービスをつくり、様々なデザイナー、プロダクトマネージャー、投資家の方々とお話をしていく中で見えてきた「ソフトウェア開発に必要な体験設計の身につけ方」についてまとめてみました。
明確なアウトプットやわかりやすいアプローチがない「体験設計」という領域。少しでも紐解いていきたいと思います。
体験設計の歴史は浅い
「UX」というが生まれてきたのは、今から25年前だそう。
1995年にドナルド・ノーマン氏がApple Computer で働いていた時の自分たちのチームのことを、「User Experience Architect」と表現したのが最初だと言われています。
広大な意味を持つ体験設計という言葉
出典: https://dginfosys.com/ux-ui
体験設計といっても、UXデザインと言われたり、定義や言説がいくつも存在します(言い切るとマサカリが飛んできそうで怖い...)。
話を進めるために、ここでは「Webサービスやアプリなどの、デジタルプロダクトをつくるときに、ユーザーの行動を設計すること」と定義しておきます。
例えばこんなこと👇 が当てはまります。
・利用するユーザーを設定すること、明らかにすること
・ユーザーがサービスを利用する前、利用中、利用後にどんなことをするのか、したいのかを想定すること
・ユーザーがサービスを利用することで、特定の課題を解決すること (新たな行動を生み出すこと)
逆に、UXの定義を調べると以下も含まれてるという説も出てきますが、今回は言及していません。
・ビジネス上のゴールやKPIの話
・細かな使い心地など、いわゆるユーザビリティやアクセシビリティ
なぜ今、体験設計が重要なのか
なぜ今、体験設計や情報設計が必要なのか。
note社CXOの深津さんによると、体験設計は「テクノロジーを扱う企業が勝負するために必要」とのこと。
Google Cloud が開催したINEVITABLE ja night での深津氏の登壇資料
多くのサービスが生まれてきている今の時代では、「ただ存在する」「わかりやすい」だけでは埋もれてしまいます。多くの人に使われる、愛されるためには、「ユーザーの体験」をより強めていく必要が出てきました。
そして、体験をユーザーに伝えていくためには、適切でわかりやすい形じゃないといけない。体験は情報となり、それらが整形されてビジュアルとなって伝わっていきます。体験とユーザーをつなぐものとして、情報設計も同じように重要だと言えます。
フレームワークに踊らされない、体験設計の身につけ方
一方で、体験設計や情報設計には明確に「これ!」といったアウトプットが存在しないように感じています。
出典: https://uxdesign.cc/how-to-build-a-customer-journey-map-3f3651ec9990
カスタマージャーニーマップを描けばいいわけでもないし、たくさんのユーザーリサーチをレポートにまとめればいいというわけでもない。
「じゃあ、一体どうしたらいいんだ」と私自身も試行錯誤した時期がありました。そんな時に他社のデザイナー、プロダクトマネージャーの方々にヒアリングをさせてもらい、自社のプロダクトで実験をしてみたんです。その結果見えた「体験設計・情報設計を身に着けるための近道」は以下の通り。
1. 視点を身に着ける
「このように考えていけば良いのか」というような考え方や、ものの見方を身に着ける
2. サンプルやケーススタディを多く取り入れる
フレームワークを取り入れるのではなく、「この場面では、このアプローチやアウトプットが有効」のような、場面とアプローチ、アウトプットをセットで掴むことで、場面ごとの最適解をストックする
3. 実践を通して手札を増やす
自分でやってみることで「知っている」状態から「使える、できる」状態にまでしていく
巷では「ユーザージャーニー」「ペルソナ」「ヒューリスティック評価」「サイトストラクチャー」などなど手法やフレームワークがたくさん出回っています。
上手く活用できれば、それぞれ便利なんですが、フレームワークを使うことだけを重視してしまうと「何のためのフレームワークなのか」抜け落ちることが多く、空回りしたり、沼にハマったりしてしまいます(実体験)。
使いやすいフレームワークなどは、一見わかりやすく、心地よいアウトプットが出ますが、フレームワークに踊らされて「きれいにまとまったけど、事業は進んでない」状態になるので注意が必要です (自戒 of 自戒)。
さて、ここからは、より詳細にどのように体験設計・情報設計を身につけていけばいいのか、僕が思う具体的な方法論について書いていきます(あくまで現状の解)。
1. 視点を身に着けるためのインプット
まずは「守破離」の守。能力を身につけるためにはまず、必要な視点ことが大切です。
体験設計・情報設計を行うための視点を身につける際、僕がインプットに使って特に良かったと思うのが、、こちらの『行動を変えるデザイン』。元スタンフォード大学の教授である著者が、人の行動を変えるデザインについて、理論から実践まで網羅的に解説しています(なんとこの教授の生徒の1人が、InstagramのCEOで、当時デザインの授業で、Instagramのアイデアを思いついたそう)。
また、任天堂のデザイナーさんが書かれたこちらも、素晴らしい本でした。
他にも多摩美の吉橋先生が推薦図書をまとめてくださっているので、こちらもオススメです (ありがたや...)。
(他にも、おすすめな本がありましたらぜひ @kenjikatooo までぜひぜひ教えてください🙏 )
2. 参考になるケーススタディを集める
次に、リアルなプロダクトの事例で、体験設計や情報設計について触れられているものを収集するとよいでしょう。
ここではいくつか自分が参考にしているものをピックアップしています。他にもあればぜひ教えてください。
● 戦略から体験、情報設計、そして実装へと落ちていく流れがすごく綺麗な10X矢本さんの貴重な仕様書
● 灰色ハイジさんがTradecraft時代に手掛けたダッシュボードリニューアルのプロジェクト
● クックパッドのちょねだ氏によるクックパッドマート立ち上げのストーリー
● 同じくクックパッドのTaigaさんから、レポート機能のデザインについての記事
● 同僚のデザイナー、グレイテストヒロキのコーポレートサイトのデザインプロセス (こちら)
また、上記を踏まえ、自分でも週末でつくったサービスのプロセスとUIを公開してみました (詳細はこちら)。
3. 実践を通じて場面ごとの最適解を掴む
ここまで行うと、体験設計・情報設計の考え方や雰囲気が掴めてきたのではないでしょうか。
✅ 1. 視点を身に着ける
「このように考えていけば良いのか」というような考え方や、ものの見方を身に着ける
✅ 2. サンプルやケーススタディを多く取り入れる
フレームワークを取り入れるのではなく、「この場面では、このアプローチやアウトプットが有効」のような、場面とアプローチ、アウトプットをセットで掴むことで、場面ごとの最適解をストックする
3. 実践を通して手札を増やす
自分でやってみることで「知っている」状態から「使える、できる」状態にまでしていく
絶対的な正解がない分野だからこそ、最後のステップは「さまざまな場面での実践」だと考えています。
企業の規模や、ドメイン、ビジネスモデル、組織のカルチャー、自分の関わり方によって、求められるアウトプットは大きく変わってくると思うので、都度最適解を見つけたいものです。
さいごに
これまでの経験や失敗、多くの方々からの助言、行ったリサーチから、体験設計と情報設計というふわっとした分野について言語化してみました。
プロダクトマネジメントとデザインの両方に関わる身としては、すごくホットなテーマで、自分自身「もっと早く身につけたかったな」と思うこともあり、似たような境遇の方々に少しでも役立ててほしいと思いこの記事を書くに至りました。
この分野の熟練者。足りていない観点や、補足、修正など、どしどし教えてくださるとありがたいです🙏
twitterもゆるゆるとやってますのでよければぜひ!