忘れ得ぬ思い出話-1月の魚病対策-
具体的な魚病の話に入る前に、私が錦鯉の飼育を始めて数年たった頃に、私の鯉の友であり師でもあった菅原正氏(故人、元宮城県支部監事)に聞かされた話を述べたいと思います。
菅原さんは生前、錦鯉の他に洋蘭の大家でもあったのですが、彼が蘭を始めた頃、二千円ぐらいの安い蘭を買っては枯らし、枯らしては買いに行く日々が続いたそうです。
特に勉強もせず、大した値段でもないからという気持ちだったのです。
ある日また蘭を枯らしてしまい、新しいものを求めようと店に行ったところ、その店の主人が、「この蘭は一万五千円の大変いい蘭です。ぜひ育てて見てください。」といわれ無理やりそれを買わされてしまいました。
さあ、サラリーマンにとって一万五千円は大金です。
その日から彼は一生懸命勉強し、ときには先輩から聞いたりして愛情をかけて育て、立派な花を咲かせることに成功したのでした。
そして得意になってその蘭を店の主人に見せに行ったところ、その主人曰く「菅原さん、実はその蘭は二千円の蘭なのです。だましてすみませんでした。でもよく育ててくれました。」といって、今度は本当の一万五千円の蘭と取り替えましょうと言ったのです。もちろん、菅原さんはその申し出を丁重に断り、自分で愛情をかけて咲かせた安い蘭を持ち帰ったのでした。
それ以来、その店の主人と菅原さんとのさらに深い付き合いが始まったのは言うまでもありません。
この話を思い出すとき、これは、そのまま、錦鯉の飼育に当てはまるであろうと思いますし、魚病対策の基本にも通じてくるものだと思うからです。安いから…。いっぱいあるから一尾くらい…。などという心では初めから立派な錦鯉の飼育はできませんし、魚病の対策などする必要もないわけです。
安価な花でも愛情をかけて大切に育てれば美しい花を咲かせ私達の心をどんなにか和ませてくれることでしょう。
そのためには努力をせねばなりません。ここが、魚病対策の原点のなるのだということを心にとめてほしいと思います。
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