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麻酔の方法②-9月の魚病対策-

③麻酔の維持

つまりこの時期に手術を行うわけで、それだけに最も経験や、テクニックを要するところです。短時間の手術なら問題はないのですが、20分、30分、それ以上になりますと、適当な維持濃度の麻酔剤が入った水に鯉を浸して、このときはエアレーションや、水の補給を行いながら手術をします。

このとき、常に呼吸回数などを注意していなければなりません。毎分10分以上の呼吸数であれば心配ありませんが、麻酔の濃度が強く、時間が伸びたりしますと、延髄の麻痺が生じ呼吸停止、心停止を来すこともありますので、注意が必要です。呼吸が微弱になりましたら、すぐに新しい水を加えてやるか、元の水に戻してやります。ふつうは導入時の1/3〜1/5の濃度で維持できると思います。

手術に気を取られておりますと、逆に麻酔が浅くなって興奮期に戻ってしまい、急にあばれることがあります。このとき飛び出しなどの事故を予防する意味で、私はビニール袋を使用しております。つまり、維持濃度の状態でビニール袋に鯉を封入し、手術する部位に一致したビニールの部分をさいて、鯉の局所だけを出して行うわけで、安心して手術をすることができます。

実は小さな鯉(五分ぐらいまで)などは、麻酔をしなくても、このビニール袋だけで安静に保持されて静かになって簡単な手術が可能です。助手の少ないときなど便利ですので、一度試してみてください。(図1)

図1

④覚醒

麻酔剤の入っていない池の水の入ったタライに鯉を戻し、エアレーションをしながら観察していますと、少しずつ体を動かすようになって徐々に立ってきますので、元気になったところで、池に戻してやります。

覚醒もしていないのに、池へ放り込むようなことは絶対にしないでほしいと思います。そういった場面を見ることがたまにありますが、愛情を疑いたくなります。麻酔は導入と覚醒のときが、いわばジェット機の離陸と着陸のときと同じで、注意を要し、また事故が起きやすいものなのです。(図2)

図2 麻酔の流れ

⑤後処置

池に戻り元気になればあとは問題ありませんが、その日くらいはよく観察してあげたいものです。いつものようにエアレーションを十分に行い、酸素不足にならないようにします。1日は餌止めをしてください。


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