注意するべきこと-11月の魚病対策-
人為的な失敗例
これまで主として代表的な魚病について述べてきましたが、魚病同様に注意しなければならない人為的な失敗例について述べてみます。
⑴鯉の飛び出し
治療のために池から小さな薬浴槽に移した場合や、新しい鯉を入池した場合に発生します。ちょっと目を離したスキや、夜間に外へ飛び出して死亡あるいは回復不能な損傷を負います。水面が30〜40センチぐらい低くても、また移した水槽が多少広いといっても安心はできません。簡単なふたなどをしてもはずしてしまうことがありますので、薬浴やできるだけ池内で行うのが安心です。
万一飛び出してしまっているのを発見したら、わずかでも鰓蓋を動かしている場合はもちろんのこと、動いていない場合でも必ず池水の入ったタライの中に鯉を入れ、エアレーションあるいは酸素補給を行い様子を見ます。大きい鯉の場合は鰓蓋を開いてやって人工呼吸をしてやってください。(5月号参照)
こうしている間、鯉の体表についた砂や泥を丁寧に取り除き、傷ついたところはマーキロやピクオタニンブルーで消毒し、更にゲンタシン軟膏(人間用)を塗布してやります。自発呼吸がでてくるようですと十分助かる可能性が大となります。大きい鯉よりも小さい鯉の方が蘇生力は強いものです。
⑵水道水の出し忘れ
いわゆるカルキ障害のため鯉をやられて、鯉を死亡させてしまいます。池掃除をした後など池水を落として少なくなった時、これを急速に補給しようとして水道水を直接池に注入した場合に発生しやすいので注意してほしいものです。カルキ障害の応急手当はハイポと純酸素補給が一番です。
⑶底水抜き栓の抜き忘れや排水ポンプのスイッチ切り忘れ
これも以前は結構耳にしましたが、池水がすっかりなくなってしまいますので鯉が全滅してしまいます。
⑷薬浴の放置
薬浴時間が3時間の予定がすっかり忘れて翌日気付いた例などがあります。薬の濃度の高い短時間薬浴の場合など、悲惨な結果を招きかねないことになります。
⑵⑶⑷はいずれも不注意からくるわけですが、結構多く報告されています。池の掃除や鯉の手当てなどしている最中に急用があったりして発生するのがほとんどのようです。くれぐれも忘れないように注意してほしいものです。
⑸基本的な知識の欠如のため生じる事故
鯉の病気を治療する場合は感情的になってはいけません。つまり、美しい魚体にシミがあっても気になるものですが、まして皮膚病やでき物が生じた時などは早くそれを視野から消してしまいたいと思うのは人情ですが、ここであせってはいけないということです。
ガリガリ削ったり切除したりして、そこから二次感染を起こして死なせた例が少なくありません。じっくり観察し、診断と適切な治療の準備を怠ることなく、術後の処置も万全に行いましょう。その他、薬の濃度の誤り、注射部位の誤りなど、基本的な知識の欠如のため生じる事故は結構多いのです。
⑹品評会の出しすぎ
これは前述したとおりです。
これまで述べた薬剤の簡単なまとめ
マゾテン、メチレンブルー、過マンガン酸カリ、エルバージュ、マラカイトグリーン、ホルマリンについて簡単な基礎知識を表1に示しました。