眼球の突出と立鱗について-8月の魚病対策-
比較的多い質問に「眼球が飛び出すが、どうしたものか」ということがありまして、さらにそのとき、「立鱗がみられる」こともあるということでした。私自身は「眼球がとび出す」鯉を持った経験はないのですが、皆さんの話を聞かせていただいていろいろ推論しております。
全体的あるいは局所的にも水が貯留する、いわゆる水腫あるいは浮膿の病態は、①炎症性疾患、②腎機能障害を含めた水、電解質代謝異常、③静脈系の障害(リンパ系を含む)、④心疾患などが原因として考えられるわけですが、前記の鯉の眼球が飛び突出する状態は、①および②が最も考えられると思います。
そのうち①の炎症性疾患は、外傷や細菌感染による腎炎の発生、②過食や以上食物摂取による一過性の水、電解質代謝異常、そして③慢性化した腎の変性による腎機能障害が考えられます。
鯉は淡水中で浸水とイオン不足の危険に常にさらされているわけでして、体内の水とイオン不足の危険に常にさらされているわけでして、体内の水とイオン平衝を行うのに、腎、膀胱、食道、腸や鰓が、その調節器官として働いています。
鯉の皮膚は水とイオンをほとんど通さず、これらの出入は主に鰓を通して行われます。鯉は淡水中で侵入する水を多量の低張尿として排出しているのです。
①の細菌感染による場合や、③の慢性化した場合は長期化し、治療するのに大変苦労するでしょう。しかし、②の場合は絶食を3〜4日も行えば回復の徴候を見せるものと思われます。
日頃、私達は春〜初夏に、過度に餌を与えたり、さなぎを与えすぎたりして、局所の充血や立鱗状態になるのをよく経験します。このとき、餌止めをしますと1〜2日ですぐ治癒してしまいます。無神経にどんどんさなぎ等の餌を与え続ければ、症状は増悪していくでしょう。
過食や異常食物摂取によって食堂・腸がまず障害を受け、更に腎に負担がきて、水、電解質代謝にすぐ以上を来すことは考えられます。水・電解質代謝機能が低下すれば、外界の侵襲を防ぎきれず、組織の浮腫を来します。程度が悪化すれば、全身の主要―まつかさ状―を呈することにもなるわけです。局所立鱗や眼球突出等は、こうした病態の過程の中での一現象であるとも考えられます。
以上は私の推論ですが、電話をいただいた方々の話を聞きまして、どうしてもこの過食や異常食物摂取の問題を考えざるを得ませんでしたので、述べさせていただきました。参考になれば幸いと思います。
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