鯉の蘇生ABCD-5月の魚病対策-
不幸にもこうしたカルキ障害を受けた鯉には速やかな救急処置が必要です。常に蘇生ABCDを頭に入れて行動します。
AはAeration(液体への空気供給)
BはBreathing (呼吸)
CはCirculation(循環)
DはDrug(投薬)
Aerationは純酸素ならばより強力です。鯉自身がまだ少しでも自発呼吸をしている場合は、ただちに適量のハイポでカルキを中和するか、温度差のない良い水に移動し、純酸素にてビニール袋詰めにします。
普通はこれで比較的早く立ち直ってくれます。一時間ほど十分に酸素を与えた後、元の池に戻しますと、約1〜2日で元気になります。特にDrugは必要ありません。A、B、Cはこれでクリアされているわけです。
この時に注意が必要なのは、鯉自身の自発呼吸があるときに下手に人工呼吸をしてやりますと、リズム(タイミング)が合わずかえって呼吸抑制を起こすことがあります。
すっかりひっくり返ってしまって呼吸も停止してしまったような時は、人工呼吸をしなければなりません。
鯉と相対するようにしてその頭部を両手ではさむようにして押さえ、三〜五本の指を使って鰓蓋を規則正しくゆっくり開いたり閉じたり根気よく繰り返します。助手に鯉の体が横にならないように押さえてもらうと助かります。
このようにしてやることによって、心臓さえまだ動いていれば、鯉に新しい酸素を含んだ水を送り、さらに鯉の体組織のanoxiaを解消することができるわけです。当然、純酸素を強力に補給します。
水温は一定に保ち、高くすることはよくありません。水中の溶存酸素は水温が高くなるほど低下し、逆に鯉自身の酸素消費量は増大するからです。そして、血液のヘモグロビン(酸素を組織へ運搬する)の酸素飽和度も、温度が低いほど、pHが高いほど、効率よく高くなります。(図2)
この人工呼吸を三時間続けて自発呼吸が出て来ないときは、残念ながらあきらめねばならないでしょう。
心停止の際の心臓マッサージについては、今後の課題と考えております。ノルラドレナリンや、テラプチクなどの薬剤(Drug)についても明解な資料は持ち合わせておりませんので、別の機会までの課題としたいと存じます。
※画像はイメージです。