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[詩] 日帰り旅行
ここがだいたい鳥取であるなら
東京でもあるだろう
行ったことはある
来たことはなかった
しかし、東京でもあるなら
カリフォルニアでもあるし
「地続きだからね」
砂が必ず混じっているのだろう
砂は石、いや象にとっては砂以下
手の上に乗っけてみれば、丸い
丸いものはだいたいおいしいので
鳥取はおいしい。
ならばそれらは死骸なのだろうか
私たちは穏やかに死骸を食べる種族
「カリフォルニアは
鳥や魚や豚や牛なんだよね。」
コールアンドレスポンスは
あらゆる土地でも特産品なのだから
何が市場で並んでいたところで
驚くことではないのだろう
驚くことのない剥製の鳥取は
市場にあるのだろうか
「市場は人が密集しているよ。」
だそうだから
死骸でなければウイルスが喜ぶのだろう
この窓からみえる山にもウイルスがいる
何度でも言おう
あなたの指の先に山ある
人がいようが、紅葉が綺麗だろうが
山は山
ならば、ウイルスは山
人も山 紅葉も山
鳥取も山。山、山、山。
山続きで本州最西端では山口も
東京を山の真ん中の棒が指している
辿ってけばそこは東京
東京は市場では
どのように並べられているのだろうか
ピアノの鍵盤ように
黒と白に塗り分けられているのだろうか
鍵盤が白や黒なのは
芋ようかんと見分けがつくようにしている
可能性と同様に
やっぱりウイルスもいる
可能性とは地球儀をいいかえたものだ
地球儀には全部が盛られている
地球儀に市場は含まれるだろう
きょうも市場は人が密集しているだろう
よく向こうが見えない
どこからどこまでも並べられている
「叩いてみれば、それが嫌ならば
そっと押してみれば」
音が出る。気分が落ち着く
生ハーブを大量に嗅がなくても
市場には生ハーブも並んでいる
ひとつだけ手にとって
そっと息を吹きかけてみれば、
通行人がにっこりと微笑む
お店の人は怒る
日帰り旅行から帰ってきた。
テーブルの上に紙が1枚置かれていた。
土地の名前は
消えてしまって
その微笑みのうえに
並べられた死骸は
ウイルスがはびこる
ピアノの黒鍵と地球儀
市場で綺麗に
可能性とともに並べられている
短いだけのあの季節は
紅葉を選んだあなただった