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[詩] 私の土地で

眠い中の言葉は
契機を待ってさまよって
りんごを剥いていました
たぶん夢の中で
緊張が失われて
身体に力は残ってはおらず
薄くなるのが精一杯です
トカゲが道を這って
うすぼけて
ほぼ道路に同化し
冬の弱い光を受けて
白くぼんやりしている
わたしが目を開けているのか
閉じているのか

すこし覚えています
この土地には広い空き地があって
背の高い草むらがあって
真ん中に大きな穴があって
真っ暗で
手をタンと叩くと
タンと
音が返ってくる
それはときどきで
穴の機嫌がいいときだけで
そんな思い出が
真っ青だったことも
覚えています

背中にあたる陽の暖かさが
足を忘れさせ
宙を浮いているようで
町の名が目に入り
その瞬間私は町でした
他に言いようがなく
薄い飴色の空気に
目を凝らしていると
ハイブリッド車が急に
横を通り過ぎ
赤を私に握らせて
右に曲がりました
音は粉々になり
ばらまかれて
人気はなく 
虫はたくさんいるんでしょう
鳥は見渡す限りは飛んでいません
赤を握りしめました

割れている植木鉢
葉牡丹だらけの家
赤をそっとおいて
三軒並んだ
まったく同じ建売住宅
同じオレンジ色のひさし
横スクロールに歩く私は
向こう側に一度消えて
あちら側からあらわれました
20年前に閉店した中華屋の看板
遠くに見える神社
その向こうに山が
そのまた向こうの私が
その先は三叉路で
右手を軽く上げた私は
どちらにいくのだろうか
小さくなって見えなくなって
ビスケットの空き箱
ビスコ?

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