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[詩] 声がはえていた跡

騒がしくもなく静かでもなく
公園の横を通り過ぎるとき 
甲状腺に逆らわずに
口を開ければ 
声が音もなく落ちてゆく
丸まってしまった廃墟に
響いているのは声の切断面
あれは声の切り株

大小さまざまな年輪が
時の経過を告げるけれども
私の文字をみつけるには
消しゴムでていねいに消された跡に
草をうえるしか 
声がはえていた跡が
歌いだしたから
洗い流されるのを
確かめる前に
ぎゅっと目をつぶって
目の切り株を造る
だれが年輪を数えるのだろうか
数える声が聞こえるのだろうか

きゅうにだるくなり
しゃべりたくなくなってくる
そうじゃなくたって
くろいいぬ 
赤いおおきなくち
くるっと あけて
かみつく それがあかしって
もうちょうじょうなんだね
あれはなんだっけね 
つづくよかんだけする 
てをのばす
さわったものから凍る
叫ぶ だれかが
すべりだいのうえで
それはいつものことで
まよなかは まんなかで
日の入りと日の出に
りょうほうから
おしつぶされるから
きっとやわらかいなにかになって
ながれだすまもなく
まきついているのだろう
こえにかたくかたく

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