(詩)夏至

幸せだったかと訊かれれば
幸せだったと答えるだろう

思い出すのは
琥珀色の水飴のような君の声
ふいの言いまちがいの笑いあい
意味もなく一緒にぎらぎら汗臭くなった日々
暑さの最後の日にようやく飲んだ
アイスコーヒーのほろ苦さ

忘れられないまま一分一分が
分かてない時を分かち
分かったふりをしたぼくは
分かちがたい分からなさをかかえ

待っていなくても
夏至は勝手におとずれて
頼んでいなくても
夏至はまたおとずれるから

 

幸せだったかと訊かれるか
幸せだったと答えるだろうか

痛みを知らない無邪気さを
子供じみた鈍感さを
いまさら残り香のように
忘れたかけたように懐かしく思っても
かさぶたの跡に隠れた
疼きはなかなか
許してはくれなくて

過ぎた日の過ちはとうに
過ぎ去って過去になって
過ぎた今からはもう及ばなく
お呼びでない感情が背中をとらえ

ぼくの心をノックしようとする
君の言葉にぼくは意味を探した
君の心の鍵を開けようとする
ぼくの言葉を君はそのまま抱きしめた

頼みもしなくても
夏至がそっとおとずれてきて
待ちたくもなかった
夏至がついにおとずれて

 

いずれ
いつか
どこかで
幸せだったか訊かれたら

たぶん
おそらく
きっと
幸せだったと答えるだろう

ずっと
いつも
いまも
幸せだったかわからなくても

 

夏至の夜が
ぼくらをつつみ
夏至の夜が
それぞれにくれる

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