girl

ぼくがこの世界に落ちてきたときには
ぼくは半分こでしかなく
この世界にはあらかじめ どこかに
ぼくのかたわれが用意されている
もしそれが本当なら そのかたわれは
ぼくなんかといっしょにならなくていい
そう思ってぼくは書く
まだ見ぬ 顔すらわからないあの子のために
世界一なさけないラブソングを
宇宙一はずかしいラブレターを
キモいかもしれないけど
たとい人の抱くすべての望みが
キモいものであろうと
そして
きみといっしょになることがなくても
書かざるをえないんだ

きみが 男の子の好みそうな感じの
女の子である必要なんて
これっぽっちもないんだ
男の子にとっての魅力なんて
ガン無視すればいい
きみは自分にとって
いちばん魅力的な
女の子になればいい
そんなふうに変身するときに
ぼくがそばにいられたら
たぶんしあわせなんだと思う
けど ぼくのこともガン無視すればいい
ぼく好みのきみでなくても
きみがきみならそれでいいし
ぼくのことなんて気にしなくていいんだ
エールとか後押しとかそんなんじゃない
これはぼくの最大限の願いなんだ

すべての愛も恋も身勝手で
そんなこと重々承知で
愛とか恋とかは少し力を入れれば
驚くほど滑るように走る
この勢いにまかせて愛は恋は言葉になる
いちばん単純なひとつの言葉
そこになかなか言葉にならなさそうなものを
深海よりも高い圧力で強引におしこめる
愛とか恋とかのはかり知れないパワー
どうやら世界のはじまりのころから
その強さは変わらないようだ
ぼくもいつか言えるかな
そのいちばん強い一言を
とは思うけれど
その力や身勝手さが 勢いが
君やぼくをこっぴどく傷つけてしまうなら
ぼくはやめておくよ
幸か不幸か ぼくは臆病なんだ

何かあったらきみの元へ飛んでいきたい
そしてきみを包み込みまもりたい
もしきみと出逢えたらそう思うにちがいない
もしかして何かあったり寂しかったり
まもってほしかったりするのは
きみじゃなくてぼくかもしれない
翼なんてないし
ごらんの通りぼくは弱い
きみを思う気持ちだけは負けたくない
とは そのとき思うだろうけど
好きな気持ちを誰かと比べたこともない
比べる勇気もないから
ほんとに負けてないのか
わからなくなると思う
確かに言えることなんて
ほんとになにもないんだ
でもね
ぼくはあえてそんな弱いところを
きみに見せたいと思った
ぼくだって ふつうに強がりで
さらけ出さなきゃ男じゃないなんて
思ってしまうんだ

もしきみがぼくと出逢って
ぼくと生きていたいと万が一思っても
きみでぼくを満たしたいだなんて
やめてほしいんだ
ぼくがぼくのかけた半分をうめて
今のぼく以上のぼくになるために
きみを犠牲になんかしたくない
今のぼくがかたわれだとしても
かけた半分をみたすのはたぶん
きみであってはいけないはずだし
そもそもきみは
誰かのかたわれなんかじゃない
ならぼくは まずこのままのぼく
半分こで半分こなきみと
歩いていきたいんだ
そして
かけたままの半分こと半分こが
手をとりあって
拾い集めたもので半分ずつを埋めて
ゆっくりでもいいから 支えあいながら
ひとつとひとつを目指せたら
半分こと半分こがひとつに合わさるより
時間はかかるけど
すばらしいんじゃないかな

なんて
虫がよすぎるかな

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