変わりたい・チャレンジしたい人のためのコーチング:認知科学に基づくコーチング

関根源二(せきねけんじ)です。
 現在、世界130ヵ国以上で展開する外資系プロフェッショナル・ファームの日本における、グループ戦略の策定・実践の責任者として働いています。もともとの専門は、アクチュアリーとしての企業年金や保険、および、日本企業による大規模海外投資でのM&Aコンサルタントです。
 この投稿は、認知科学に基づくコーチングセッションに興味のあるかた、初めて受けられる方をを対象に、認知科学に基づくコーチングの概要、その理解に必要になる用語をまとめたものです。
 


■ コーチングとは?

皆さんは、「コーチング」という言葉を耳にしたことはありますか。

(^-^) コーチ?スポーツのコーチのこと?
(^0^) 1on1の質を上げるために上司がスクールにいって習ってた、あれのこと?
(^-^) あの有名な経営者がお勧めしていたエグゼクティブ・コーチングとかいうやつかな?

いずれも正解です!コーチの語源は「馬車(COACH)」。その役割は「乗客を目的地まで送り届けること」、ですので、コーチングとは「クライアントを目標・ゴール達成へ導く」行為です。

■ 認知科学に基づくコーチングとは?

ただ、コーチングというのは世の中共通の定義などはなく、色々な団体がそれぞれ「コーチング」と謳ってサービスを提供しています。では、様々なコーチング手法が存在する中で、『認知科学に基づくコーチング』とはどんなものでしょうか? それは

皆さんのゴールを一緒に設定し、皆さんの信念(ビリーフシステム)を書き換えることで、ゴールは達成きて当然だと思わせ、ゴール達成まで伴走をする

というものです。「えっ、そんなこと本当にできるの?」と思われるかもしれませんね。理論的背景も含めて、少し詳しく説明します。

まず、認知科学というのは、「ヒトの認知の仕組み」を知る学問のことです。

私達は日々五感で多くの情報を受け取り、その情報を脳と心で処理し、そこから行動が生まれています(その情報処理を【内部表現(ビリーフシステム)】と呼びます)。

このビリーフシステムは人によって異なります。ですので、全く同じ外部刺激を受けた場合でも、人によって出力変わってくるのです。例えば、同じ自己啓発のセミナーを受けた場合、Aさんは強い刺激を受けて翌日からの行動が変化する一方で、Bさんにとってはただの知識の拡充でしかなく何の行動変化が起きない、というようなことはよくありますよね。

認知科学に基づくコーチングでは、コーチとクライアントとの対話を通じて、このビリーフシステムを書き換えることで、クライアントにとっての情報処理、解釈が変化し、その結果、行動変化が起こっていくのです。

では、どうやってクライアントが望んだ行動が導き出されるようにビリーフシステムを書き換えるのでしょうか?

それは「ゴール設定」をすることによって可能になります。

実は人間の脳は、周りにある全ての情報を処理しているのではなく、自分にとって重要な情報のみを取捨選択して取り込んでいます。つまり、自分にとって重要でないと判断したものは見ない、見えないようにする一方で、重要だと判断した情報を勝手に探しにいって、取り込んでいくのです。認知科学に基づくコーチングは、このような脳(マインド)の特性を活用し、上手にゴール設定することで、脳にゴールに関係する情報は重要だと認知させ、勝手にそれに関する情報を収集させたり、ゴール達成に向けたアイデアを考えださせたりするのです。このプロセスを「ビリーフシステムの書き換え」と呼びます。

つまり、認知科学に基づくコーチングにおいて「ゴール設定」は“達成したい目標を定める” というような単純なものではなく、脳(マインド)の内部の秩序を壊し、新たな秩序を作り上げるためにエネルギーと創造を生み出す、という非常に重要な行為となるのです。

具体的なステップとしては、クライアントはコーチと共に以下を実施していきます
1. クライアントにとって適したゴールを設定する
2. その達成に向けてビリーフシステムを書き換える(書き換わる)
3. ゴールを達成できる/達成して当たり前と実感して行動できるようになる

これが、認知科学に基づくコーチングのエッセンス(本質)です。でも、こんな質問も湧いてきたのではないでしょうか?
・じゃあ、適したゴールってどんなものなの? どうやって設定するの?
・ビリーフシステムってどうやって把握するの? どうやって書き換えるの?
・ゴール設定の後、どうしたら達成できる、って思えるの?

これらのプロセスはコーチがセッション中に積極的に介入する(クライアントのマインドの中で起こっているエラーを指摘する。いわゆる、傾聴や共感ではない)ことによって実現されます。以下では、セッションの内容と、セッション受けて頂くために必要となる基本的な用語を説明いたします。

■ セッション(仕事のゴール設定)内容

時間:60分~最大90分
形式:オンライン(GoogleMeetを使用します)

【やること】
・職業機能の特定(肩書や役割ではなく、どんな価値を生んでいるのか)
・本音の欲求でやりたいこと(Want to)の特定
・Want toに基づいた現状の外の仕事のゴール設定

【こんな人に受けてもらいたい】
・毎日が同じような生活で現状から脱却したい
・自分の可能性を発見して、それに向かって進んでみたい
・周囲には話せない実現したい夢や目標がある(でも着手できていない)
・やりたいことが良く分かっていないが新しい何かに挑戦したい

【オススメしない方】
・セッションで正直に話しができない人
・現状に満足していて変わる気が全くない人
・現在の自分の生活に何の不満も持っていない人

■ コーチング用語について

コーチングセッションで以下の単語は使うのでイメージを持っておいてください。

ゴール設定とその基準

認知科学に基づくコーチングでは「未来のなりたい自分」に臨場感を持つことで、人間のマインド(脳と心)が動き出し、その未来を実現する道筋を無意識に発見し、実現できるように導きます。この「未来のなりたい自分」を「ゴール」と呼びます。クライアントは「ゴール」を設定するのですが、大切な条件が3つあります。

①本音のWant to
②現状の外
③バランス・ホイールでオールライフでの設定

① 本音のWant to
権威のある人に止められてでも、社会的にはアウトでも、ついついやっちゃうこと!それがその人の「want to」です。こんな例があります。
■want to「整理整頓」 
⇒散らかっているのが嫌。部屋でも、意見でも、頼まれなくても整理してしまう。
■want to「何でも最初にチャレンジ」
⇒何を行うにも、一番最初に行う、っていうのがとっても楽しい。

この逆が「ねばならない」のhave toです。
親に期待されて、東大に行かなきゃいけない。ピアノのコンクールで入賞しなきゃいけない。これはhave toです。

なお、この「want to」と「役に立つ」が掛け合わされた、社会に提供している価値を「職業機能」と呼びます。例えば「営業職」といっても細かく分解すると、リサーチ、企画、商品設計、交渉、アフターケア、など多くの機能に分かれます。この中で、あなたが本当に行っている機能、その中で提供している価値が職業機能です。

② 現状の外
ゴールは「現状の外」である必要があります。現状とは「今」だけではなく、現在の状態が続けば十分に起こり得ると予想される未来を含みます。逆にいうと、現状の外のゴールとは、未来のなりたい自分として設定したけど、どうやっていくのかの道筋が見えないようなゴールのことを言います。

なぜ、ゴールが現状の外である必要があるのかというと、現状の中(やり方が想像できるようなゴール)を設定すると、現在自分が存在しているコンフォート・ゾーンに戻ろうとする強力な力(ホメオスタシス(コンフォート・ゾーンで後述))によって、今の状況に引き戻され、結局、何も変われないからです。

③ バランス・ホイールでオールライフでの設定
バランスホイールの8つの項目を先にご紹介すると以下となります
•仕事:Want toに満ちていて、お金を払ってでもやりたい、社会の役にたつこと
•趣味:Want toに満ちていて、お金を払ってでもやりたい、社会の役に立たない(立つ必要がない)こと
•人間関係:仕事もプライベートも含めたトータルでの人間関係
•家族:自分が家族一人一人にとってどう在るか
•知性:体系知識を身に着ける学び、生涯学習ともいう
•社会貢献:利益を度外視した慈悲的な貢献
•健康/美容:上記のゴールを達成するために必要な健康と美容の状態
•ファイナンス:上記のゴールを達成するために必要なお金を稼ぐこと

仕事が上手くいっているけど家族との関係性が微妙な人、ものすごくお金持ちだけど満たされない人、などいますよね?人生を充実させるためにはこの8つ全てがバランスよく満たされることが重要になります。

また「健康/美容」と「ファイナンス」の2つは全ての土台となるので、他の6つのゴール設定をしてから、それに耐えられるゴールとして設定をすることになります。私も最初はそうでしたが、「仕事」と「ファイナンス」を切り分けることができずに悩む人が多いようです。仕事はお金を稼ぐためのものという信念をもっているために、いつまで経っても自分の好きな仕事に就けない、仕事を通して自分を表現出来ない、と感じている方が多いようです。

エフィカシー(自己効力感)

エフィカシーとは「ゴールの達成能力に対する自己評価」のことです。「自分はそのゴールを達成して当然だ」と思えるような自信のことです。

例えば、「なんかわからないけど、次の野球の試合では勝てる気しかしない」とか、「自分は留学してもうまくやっていける気しかしない」という類のものです。

ゴールを設定した後に、日々、このような自己認識を持ちながら活動を重ねていったらゴールは達成できますよね? コーチは様々なメソッドを使って、クライアントと共にエフィカシーの向上を実現していきます。

RASとスコトーマ

RAS(Reticular Activating System)は脳の活性ネットワークのことで、五感から入ってくる大量の情報の中から、どの情報を認識するかを決定するフィルターのようなものです。あなたは、身の回りの全ての情報を認識していると考えていますか? 実はそんなことはなく、全ての人は、このRASによって情報を取捨選択し、自分にとって重要だと認識されている情報のみを脳に送り込んでいるのです。

つまり、私たち一人ひとりが認識している世界は異なっていて、それぞれの人が重要だと認識している情報のみで成り立っていると言えます。逆にいうと、RASによって重要でないと判断された情報は、脳に認識されずにストコーマ(盲点)として、仮に目の前に存在していたとしても、見えないのです。ちなみに、ストコーマとは、もともと眼科の用語で盲点のことです。コーチングの文脈では、脳が認識できないもののことを言います。

例えば子供ができる前は、“どのトイレにオムツ替えシートがあるか?” は気づかなかったのが、子供ができると“急にオムツ替えシートが目につくようになる”というのは、子供ができたことによって脳がオムツ替えシートは重要だと認識し(「RASが発火する」と言います)ストコーマが外れたことによって起こる現象です。

現状の外のゴールを設定した際も同様に、ゴールに関係することを脳に重要だと認識させ(RASを発火させ)ストコーマを外し、今までは見えていなかったゴールに関する情報が見えるようにする必要があリます。

なお、RASを発火させる大切な条件は「責任を伴う」ということです。責任を伴った事柄でないと、脳は真にはそれを重要だと認識せずRASは発火しない(ストコーマは外れない)ままになってしまいます。

コンフォートゾーン

コンフォートゾーンとは人が緊張せずにいられる物理的または精神的に限られた範囲のことです。簡単にいうと、無意識で「落ち着く~」と思える安全地帯のことです。人間はこのコンフォートゾーンから出ようとすると、元に戻そうとする強烈な力、ホメオスタシスのフィードバック機能(恒常性維持機能)が働きます。

例えば、サウナのような暑いところに行っても、南極のような寒冷地に行っても、体は無意識に体温を36度に維持しようとしますよね。ホメオスタシスとは、このように、生命を維持するために備わった強力な力のことです。

ただこれは、ゴール達成の際にはかなり曲者になります。なぜなら、ゴール設定をして、そこに向かって行きたいと思っても、現状(今の状況)がコンフォートだと脳が認識していると、そこに強力に戻そう(変わらないようにさせよう)とする力が働いてしまうからです。これが、多くの人の悩んでいる「変わろうとして努力始めるけど、継続せずに元に戻ってしまう」という原因です。

コーチングでは様々メソッドを使って、このコンフォートゾーンを、現状から設定したゴール側に移す(引越させる)ことによって、ゴールに向かっていく力を強力にする、ように導くのです。


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