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森林資源調査の基礎:ゲッティンゲン大学での森林計測論の講義

冬学期の必修科目の一つ。担当教授曰く、この講義の特徴は、経営管理の目的だけでなく国や州レベルの森林賦存量の推定を目的とした理論も教える、というところに力を置いているとのこと。他ではこういう部分まで教えるところは少ないそう。

実際、この講義で学んだ枠組がそのままドイツの森林資源調査に利用されているし、林野庁が行っている森林資源モニタリング調査の枠組についてもこの講義のおかげで理解できた。

講義は全26回。評価は筆記試験2時間の結果。
講義内容は以下の通り。

(1) Introduction
(2) Tree measurements : 樹木の測定方法いろいろ。胸高直径(DBH)からスタート。
(3) Functions and models : Form Factor や 胸高直径と樹高の関係性。
(4) Sampling Intro :サンプリングとはなにか。サンプリング調査における3つの基本原則-Sampling design, Response design, Estimation design-ランダムとは?不偏性とは?統計量とは? 。
(5) Response(Plot) design :Inclusion zone, Cluster plot, Nested sub-plot, Slope correction, Bitterlich(Angle count) sampling
(6) Sampling design : Simple random sampling, Stratified sampling, Cluster sampling, Systematic sampling, Double sampling, Line sampling
(7) Estimating forest area and length of the forest edge

一番時間をかけたのはSampling designの部分。特に、Stratified sampling, Systematic sampling、Double samplingについて。Double samplingは、リモートセンシングの知識も必要になるため、リモートセンシングの概要についての講義もあった。

森林経営の基礎データの収集にはこういった知識は不可欠。もちろん、森林行政の政策立案のための基礎データ収集と同義。最近、「フォレスター」と呼ばれる林業のプロ育成のための学校が新たに開校したりと人材育成の動きが出てきているようですが、日本のカリキュラムがどのように組まれているのかも知りたいところ。

この授業は、きちんと講義ノートが編集されていて、受講生はそれを購入できます。英語版です。僕も持っています。内容をここにUPすることはできませんが、詳細を知りたい、という方がいらっしゃれば、こちらから研究室に問い合わせをすることはできると思います。興味のある方は一報ください。かなり充実した講義ノートです。


オリジナル記事公開日:2012年5月5日


追記:2024年2月26日
修士1年目で一番苦労した科目。でも結構こういうデータで詰めていく授業は好きで、もし、博士課程のオープンポジションがあれば、絶対そっちを選んでいたなあ、と思う。日本では、森林資源モニタリング調査についてあまり知られていませんが、市町村が現在も参照している(と思う)森林簿とは精度がケタ違い。森林簿から、この調査結果に置き換えて使えばいいのに、と思うのですが。森林資源の賦存量を正確に把握するには、このモニタリング調査の結果を正とすべきです。

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