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A Nation that destroys its soil destroys itself

論文のための先行研究を当たっている最中。
以前お世話になった先生から「とにかく先行研究のレビューがとても大切だ」と繰り返し教えられたのだが、今、あらためてちゃんと論文を書こうと思うと、その教えはとてもまっとうだったと思う。

さっき、ある論文集のサマリーを何の気なしに読みはじめたら、こういう格言が。

A Nation that destroys its soil destroys itself.

直訳すると「土壌を破壊する国は自らを滅ぼす」。

これをいつ、誰が語ったか。

ルーズベルト大統領が1937年の就任直後にアメリカ全州の知事に宛てた書面の文言だった(引用元)。彼がなぜそんなことを書いたのか、というと、この年の前後数年間、アメリカ中西部を断続的に吹き荒れた大規模な土嵐「ダストボウルDust Bowl」の対策を要請するため。写真を見ると、そのとんでもなさがわかる。中西部の農業地帯で行われてきた収奪的な農法(過剰な開墾による森林破壊を含む)が原因で土壌の乾燥が進み、それがこの大規模な土嵐となったようだ。なんどか訪れている黄土高原でも類似点があるし、強風や洪水による土壌の流出の問題は世界各地で発生していたという事実に改めて気づかされた。

ダストボウル通過後の農家。1930年代のアメリカの一側面。世界恐慌だけじゃなかった。

アメリカの小説が好きな方なら、スタインベックの『怒りの葡萄』はご存じだと思う。僕は欧米の近現代小説は限られた数人(ジェフリー・アーチャーとフレデリック・フォーサイスとコナン・ドイル)しか読んだことがないので彼の作品はまったく知らないのだが、この作品の背景にはこのダストボウルがあるらしい。そのうち読んでみよう。

土壌の流出は、これが世界の乾燥地帯の農村が貧しいままでいる原因だと断言してよいくらい重要な問題。せっかく農地に肥料を入れて土地生産性を上げても、一回の集中豪雨によってすべて流されてしまう。その繰り返し。こういう土地では「それじゃあ近くの工場に勤めよう」というわけにもなかなかいかないだろうから、結局貧しさから抜け出せない。さらに、貧しい農家はお金のかからない労働力ということで子供を働かせることが多いから、その子供たちは満足な教育を受けられない、結果…、と書くのが悲しくなるのでやめるが、この悪循環を食い止めるには、外部の力を借りてでも土壌流出を止めるしかない。自力だけではいかんともしがたい。


オリジナル版公開日:2011年10月23日

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