北欧のイメージ
我が家には、森林学の修士課程でマルメに住んでいた時にセコハンショップで買ったアラビアのお皿が数枚ある。シンプルで使いやすいのでとても気に入っているのだけど、このような北欧デザインを生み出す国の一つであるフィンランドの歴史は、実はあんまり知らなかった。
上記の本を先日再読した。フィンランド含め北欧諸国の外交戦略が激変しているのが気になっていて、そのベースとなる歴史をもう一度確認しておきたかったから。
僕にとって、フィンランドといえばやはり木材産業の国。実は日本が輸入している製材品には、フィンランドからはるばるやってきているものも多い。貿易にかかる費用(運賃や関税だけでなく、移動に伴う二酸化炭素排出量を相殺する費用なんかも入る)がどんどん高くなっているので、これら欧州材の動向もどうなるか分からない。
国産材の需要がその分増えるのであれば悪いことではないのかもしれないが、製材品としての品質を国産材を使って同じようにするには、それなりのコストがかかったりして、そのまま国産材の増加につながるわけではない。
建材用に使う木材は、樹種や樹種の組み合わせによって強度が異なる。日本には森林資源が豊富にあるから、輸入ゼロでもいいのでは、という意見もあるだろうが、スギやヒノキを使える部分は使って、使えない部分は輸入材を使って、さらにスギやヒノキの輸出を増やして、ネットで木材自給率を向上させていくという考え方が現実的なのだと思う。実際、日本からの木材の輸出はコロナ後も伸び続けている。特にスギ丸太の輸出。フェンス材、梱包材、土木用材、コンクリート型枠として中国等で需要がある。
日本で暮らしていると、北欧といえばデザイン、ゆったりとした暮らしのあり方、福祉が充実しているというイメージを良く聞く。それぞれの見方は決して間違ってはいないけれど、北欧ってものすごい複雑で、良い面だけじゃないことも理解しておいた方が良いように感じる。例えば林業では、森林保全に配慮した施策がしっかり実施されているイメージがあるが、一方でその施業のあり方について批判されることもある。下記の本はフィンランドの事例を勉強する上で役に立つ。スウェーデンの林業も、2000年以降に、自然保護団体から強い批判を受けたことがあった。
なぜ北欧の社会が複雑なのかといえば、そのロケーションが原因。東欧諸国と同様に大国であるロシアとドイツに挟まれている、農業の生産性を挙げるには限界がある、その結果として人口が多くない等。フィンランドもスウェーデンもかつては多くの農民が食えなくてアメリカに移住していった歴史がある。それだけに、特に交渉事については彼らは本当にしたたかだと思う。交渉事と外交とは必ずしもイコールではないかもしれないが、外部環境の変化に応じた外交戦略のあり方はさすがだなあと思う。それだけ社会全体に危機感があることも背景。去年、リガに行ったときもそれを強く感じました。
最後に、これは前にも書いたけど、スウェーデンの社会の複雑さを知るには、Kurt Wallanderシリーズを読むことがおすすめ。特に初期の作品が僕は好きです。